052 今はもう ページ3
「そうだよ。今はもう書いてないけど」
「え？」
「IDOLiSH7にも？」
「うん、書いてない。わたしはもう歌は作らないし、歌わない。だからあの子たちにはわたしの希望とか夢とかを全部託してるんだ」
「………」
もう歌は書かない、歌わない。そう言い放った途端3人の表情が暗くなってしまった。
そういうつもりで言ったわけじゃないからこそ、やってしまったという罪悪感が残った。この子たちにはこの子たちなりに夢や憧れを持っているのに対して、さっきのはそれを蔑ろにしてる発言だ。
「…あの、ごめ、」
「やっぱりIDOLiSH7、侮れないね」
「ああ。この人にここまで認められてるってことだろ」
「？」
「IDOLiSH7、ミュージックフェスタに出演するんですよね？」
「え？あ、うん。インディーズ枠で」
「よかったな。俺たちが推薦してても断られる時は断られるからな」
「推薦？」
「ミュージックフェスタ、期待してる」
追いつけない。どういうこと？
推薦ってTRIGGERがIDOLiSH7の出演を？だとしたらそれってめちゃくちゃすごいことなんじゃ？
「花音さん。当日、IDOLiSH7の歌だけじゃなくてTRIGGERも聞きに来てください。ステージの袖で」
「え！？」
「待ってます」
「ま、待って！それはしない！わたしは当日会場にはいない！」
「………」
「どうしてですか…？」
「…Crarisuのカノが来ているなんて騒がれたら、みんなに申し訳ない。そうなる可能性がある以上、行くべきじゃないんだよ」
「当日は生放送です。今まで指導してくれていたあなたがそばにいるかいないかだけでも彼らの心持ちも変わります」
「だとしても！わたしは行くべきじゃない。なにより…」
「？」
Crarisuはもう過去の亡霊のようなアイドルだ。今の時代には今を生きているTRIGGERやRe:valeといったアイドルたちがいる。わたしが行って、水を差すような真似はしてはいけない。
この人たちは優しいから、そんなことないと言ってくれるだろう。けれどわたしはその優しさに甘えるわけにはいかなかった。
ーーーCrarisuを終わらすと決めたのも、過去の亡霊にしてしまったのもすべてわたしのせいだから。
「わたし、もう行かなきゃ」
「花音さん…！」
「ごめんね」
「………」
「…花音」
「！」
「あんたが何を背負っているかは知らない。けどもっと周りを頼れよ。そんなん続けてたら、あんたいつか壊れるぞ」
「………」
八乙女楽の言葉は深く突き刺さったまま、わたしは逃げるように3人の元から立ち去った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠奈(プロフ) - 068 嫌い の「自分を愛してくれる人を愛したいなんて思う人いる？｣というセリフは変ではないでしょうか？ (2019年5月21日 11時) (
レス) id: 6936f9c053 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年4月12日 4時) (レス) id: a6e6d18aa3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：深瀬 | 作成日時：2019年4月12日 2時
