「愛してない」 (ページ44)

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それからしばらくして、ひかるさんに紹介してもらった深澤さんのお店で働きだすことになった。

駅前の店はとても大きく、やけに洒落た外見だったからわたしが働くには派手過ぎるかとも思ったが、ひかるさんには、またそれもいいんじゃないかと言われた。

深澤さんの携帯番号とアドレスも、渡された。

みんな気のいい奴らだから大丈夫だと深澤さんは言ったけれど、緊張するもんはする。

『は、初めまして、神谷Aです。』

「ふっかが言ってた猫ってこの子！？」

「失礼だろお前本人の前で、しかも初対面！」

『深澤さんも初対面で猫って言いましたけど…』

まん丸い大きな瞳をやんちゃそうに瞬かせその人は人懐っこそうな笑顔で言った。

「佐久間です！よろしくA！」

『え…あ、はぁ、』

佐久間さんはわたしをまじまじ見つめる。

この人がわたしよりも年上なんて信じらんない。

案内された店の中にあるスタッフルームには、わたしと同じ年の女の子や年上の男の人。

だけど年の近い人ばかりだった。

みんな何らかの理由で深澤さんと知り合い、誘われた人も居るらしい。

「Aちゃんの世話係はコイツね」

『佐久間さん、よろしくお願いします。』

「さっくんでいいからね。よろしくね？」

『はい！』

最初はレジのやり方や、洋服や小物の陳列の仕方、どれも簡単じゃないけど丁寧に教えてくれた。

忙しいときもあるけど、みんな優しくて明るくて、ここはとてもいい職場だと思う。

ひかるさんにも、笑顔が増えたな。って言われて少し嬉しかった。