「愛してない」 (ページ42)

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とても綺麗で、だけどどこか妖しげな笑み。

『秘密…？』

「そう。知りたくない？」

『そりゃ…』

知りたくないと言えば、嘘になる。

今はわたしの部屋として使われてる部屋や、女物の服。

時々見せる、冷たい瞳や悲しげな表情。

気にはなっていた。

今も、気になる。

「ね、教えてあげよっか？」

悪魔はわたしの耳元で囁いている。

気になる。

だけど。

『あの、わたし…』

「うん？」

『別にいいです。』

「うん……え？」

余程わたしの言葉が想定外だったのか、こっちを見ながらフリーズしている。

その間抜けな表情を見て、思わず笑ってしまう。

「Aちゃん知りたくないのー？」

『知りたいですけど…』

言わないって事は、誰にも知られなくないって事。

それにひかるさんは勝手に自分の秘密が他人に漏れるのを酷く嫌う人だと思うし。

そんな事をしてひかるさんに捨てられたくない。

『わたし、本人の口から聞きます』

そう言うと、深澤さんは垂れがちな瞳を更に情けなく垂れ下げた。

「言わないかもよ。一生」

『いいですよ、それならそれで。誰にだって言いたくない事ぐらいあります。』

「そんな風に割り切れちゃうの？」

『割り切らなきゃ、多分一緒に住めないし』

“ただの部屋の持ち主とその同居人”

そう言って、一番始めにわたしとの間に境界線を引いたのはひかるさんだった。

ならばわたしは、それに従うだけ。

そうすればひかるさんの側に居られる。

「んー、照がAちゃん拾ったの、何か分かるわぁ」

『え？』

「うん、合格！」

『はい？』

パンッと手を叩く深澤さんに不審な視線を向ければ、深澤さんはわたしの肩に手を置いてまた満面の笑みを浮かべた。

「俺の店で働かない？」

『店…？』

「あれ？照から聞いてない？駅前の店。俺が今仕切ってんの」

『え…っ、あ！』

この間見せて貰った、バイト募集のチラシを思い出す。

「Aちゃんと同世代の子沢山居るし！どう？」

『い、いいんですか？』

「いいよ！てか俺がAちゃんと一緒に居たいしね」

この時ばかりは、深澤さんが救世主に見えた。