「愛してない」2 (ページ10)

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ーーそういえば昔、幸せな夢を紙に描いては想像してた事がある。

結局捨てられたけど。

別にわたし、幸せじゃないなんて感じていなかった。

これが当たり前だと勘違いしてた。

だけどいつも願うのは現実とかけ離れた“幸せ”。

所詮は絵空事だって、気付いたのは、いつ頃だったっけ。

『……っあ……』

久しぶりに、あの頃の夢を見た。

どくん、どくんと心臓は加速し真冬だっていうのに汗が止まらない。

落ち着け、鳴り止め心臓。

深く息を吸い込み、はーっと吐いた。

部屋の電気をつけて、明るくなった部屋にいくらか安心を覚えてまたベッドに潜り込んだ。

「A、気分悪い？」

コンコン、という扉を叩く音と聞こえて来たホッとするような声に飛び起きて扉を開ける。

『ひかるさん……』

「物音したから……え、お前どうしたのこの汗。」

わたしの額に汗で張り付いた前髪をかき分けてくれる。

冷たい手のひらが、額に触れて気持ちいい。

「熱はないけど、やっぱ気分悪い？」

『んーん……ひかるさんは、何してたんですか？』

「…仕事。でも終わったから。」

もしかして、今日ずっとわたしの側に居てくれたから夜中に仕事してたの？

雅さんが帰った後もずっと、ひかるさんはわたしの隣に居てくれた。

迷惑、かけてた？

『ごめ…ごめんなさい。』

「何、何でお前が謝るの」

『だって…』

「…寝れないなら、俺の側に来る？」

『……ぇ、』

その言葉の意味を理解する前に、無意識に頷いていた。

だってその言葉に、安心したから。

この人の側なら、平気だって思ったから。

ひかるさんはわたしの手を優しく握って、自らの部屋に連れて行く。

広くて大きなベッドに入れと促された後、ひかるさんも自ら入って行った。

前にも、ここで寝た。

だけど、前と今と違うのはひかるさんが、隣に居てくれる。

「今日は特別だから。」

『……うん』

「寝れそう？」

『……ん、あったかい』

「お前があっついの。発熱してんの？それともお子様体温？」

『違うし……』

「はは」

目元を思いっ切り緩めた笑い方にキュンとする。

ひかるさんとわたしの間には握り拳ひとつ分の隙間があるけど、それでも温もりが伝わって心地よかった。