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Limit 36. ページ26

それも強ち間違いではないような気がしている俊也の声色は、
どこか確信を得たもののようだった。

凪斗は俊也のその指摘に、少し間を置いてから端的に言い返す。



『……そんな訳ないだろう。俺も翔達も、彼女とは初対面なんだぞ』



──答えるだけ答えると、凪斗は再び前を向いて
翔達の後に続いて歩き出して行ってしまう。

そんな彼の後ろ姿をじっと見つめる俊也は
僅かに肩を竦めさせながら小さく溜息を吐き、一人ごちた。



『…………お前らしくないな』



俊也から見た凪斗の様子を妙にさせる程の女子とは、一体どんな存在なのか。

彼はちらりと資料室の扉を見やったが、確かめてみたい気持ちを押し止めると
何かを思い立ったかのようにその場から離れて行く。





〜・〜・〜





──ふと顔を上げると、辺りは暗がりに入っていた。
この資料室は倉庫の片隅に設置された部屋ではあるが、窓はある。

しかし空にある太陽の位置は四六時中変化する事もあって、
今はそれが裏側に回ってしまっているからか光が入って来なかったのだ。

Aは傍らに置いてあったリュックからクリスタルを取り出し、
それを宙に浮かばせて光を灯す。



『…………(お兄さん……)』



このリュックを目にすれば、これを用意してくれた家族の事を思い出す。
連鎖的に、今目の前に問題としてある兄の下へと気が逸れた。

……二年前、あの実家を自ら出て行ってしまった人。
それについて父母はどこかショックを受けていたようには見えたが──

兄自身は“旅を始めようと思っている”と話すだけだったから
Aはそうなのだと思って疑わなかった。



『(でも、二年間……ずっと帰ってくることは無かった)』



家出だった、という事なのだろう。そう理解したのは数ヶ月後の事だった。

当時は彼女もまた酷く悲しんだが、自分と兄が幼い頃から好きな機械を研究し
続ける事があの人へと繋がる道になると信じて、これまでずっと続けて来たのだ。


──この資料がここにあるという事は、兄はかつてはここに居たのだろう。
だが、今の“彼ら”は兄の資料をどうする事も出来ずに手放し状態になっている。

兄本人が居れば、翔がAに“見に来てほしい”だなんて頼む事だって無かった。


資料を作った本人が一番よくわかっている筈なのだから、
その人に任せれば良いのは当然だ。

しかし翔はAにそう聞いて来た。それはつまり──



『(……もう──あの人は、居ないんだ)』

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作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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フェイル(プロフ) - ゆーふぉーさん» 聞いてないですよねえ! (白々しい。) 兄だけが、物語の最初で出て来た五人の存在を誰よりも早く知っていたことになりますね。 (2015年9月22日 1時) (レス) id: 94a6daec65 (このIDを非表示/違反報告)
フェイル(プロフ) - ヒビキさん» コメントありがとうございます! はい、その通りでございます! 話が半ばに差し掛かったところで、ようやくその正体がわかりましたね! (2015年9月22日 1時) (レス) id: 94a6daec65 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーふぉー(プロフ) - お兄さんなんて聞いてないですよΣ(゚Д゚)思った以上に複雑ですね (2015年9月21日 22時) (レス) id: 7b18582839 (このIDを非表示/違反報告)
ヒビキ(プロフ) - 違っていたら申し訳ないんですけど、タイトルの絵に描かれている左側の男の子はもしかして主人公の兄である凛空ですか? (2015年9月20日 20時) (レス) id: b7ba2d1d16 (このIDを非表示/違反報告)
フェイル(プロフ) - ゆーふぉーさん» 書籍は流石に言い過ぎです!!!! 英語ですかー……あれは暗記教科のようなものな上、継続的な勉強になりますからかなりしんどいですよね;; (2015年9月13日 16時) (レス) id: 94a6daec65 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フェイル | 作成日時:2015年8月30日 0時

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