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私を見下ろす狗巻先輩から目が離せない。

何か言わなきゃって思うのに喉奥から声が出てこない。「狗巻先輩、」と、やっと出てきた声は想像よりも小さくて自分で緊張していることを思い知らされる。

”安心感”

それがなくなった瞬間、私の中の狗巻先輩が男へと豹変する。

制服のチャックを下げた狗巻先輩の口元が現れる。狗巻家の呪印が目に留まって、この状況で何か命令されたら終わりじゃない?と疑問がわいた。



「あ、の……狗巻先輩……」
「……動くな。」



身体の動きが瞬時に止まる。

言霊の力を制御してくれたのか体の動きが止まったのは本当に一瞬で、でもその一瞬の隙に狗巻先輩の顔がグッと近づいた。

伏黒くんの時と違って口を大きく開けたままの狗巻先輩に、食べられる、と本能的に判断して目を瞑る。と、頬に歯が当たる感触を感じた。

狗巻先輩はそのまま犬がじゃれる時みたいな甘噛みし始める。愛情表現に噛む人がいるって言うのを昔テレビで見たことがあるけど実際にいるとは思ってなくて頭が混乱した。

カプカプと頬を何回か甘噛みした狗巻先輩は満足げな表情を浮かべる。時折頬に当たる舌がザラザラしていて肩が震える。



「い、ぬまきせんぱ……」



そろそろフェロモンが濃くなってきたころだ、と悟って声をかけようとした私の首筋に狗巻先輩の舌が這い、「ひっ」と声が零れる。

ブワッと顔に熱が集まって真っ赤になった私を見て悪戯っ子のように微笑んだ狗巻先輩は私を起き上がらせて、そっと、優しく頭を撫でた。


1年生が全員揃ったことでなくなった合同授業、迷惑をかけないようにみんなから気づかれない程度に距離を取っていたこと、私が「安心できる」なんて言ったこと、

そんな不満が溜まっていたのかもしれない。

それにしても狗巻先輩もちゃんと男の人だったんだな、と思って火照った頬に手を当てた。

いくら容姿が可愛くても油断したら食べられちゃいそうだ。

07:合同任務→←06:油断の代償



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作者名:もも | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/Momo_UxxU_  
作成日時:2021年2月2日 19時

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