Freiheit IV (ページ20)

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ラウール｢…っ！はあっ！｣
悔しい。
とっても、悔しい。
自分が力不足な事はわかっているし、その為に手合わせしたかったのも事実だ。
それであんなに気を遣われながら断られたのが、本当に悔しかった。

ラウールは普段のレイピアではなく、深澤が使っているものと似た形の模擬片手剣を持ち、マネキン相手に振るっていた。
まだ模擬とは言えどそれなりに重さのある剣に振り回され、思っているように振れない。
…頑張らないと。S隊の足を引っ張らないように。

岩本｢そこまで！｣
突如聞こえてきた大声にビクリ、となる。
後ろを振り向くと、岩本と阿部が訓練場の入口に立っていた。
岩本｢あんまり頑張りすぎるなよ｣
ラウール｢だって｣
岩本｢全体、特に肩に力が入り過ぎてる。後、｣
手をガっと持ち上げられる。所々赤黒く滲んでいるそれに、あっ、という声が漏れる。
岩本｢こんな手で続けても、完璧になれる訳ないだろ｣

阿部｢…照、言葉｣
岩本｢阿部が話があるってよ、今度の外交の話じゃねーの。それ終わったらまた戻ってこい｣
ラウール｢え？…うん｣
てっきりもうやるな、と怒られるのかと思っていた。

拍子抜けしたまま阿部と訓練場の外で次の外交の打ち合わせをし、戻ってくると
ラウール｢あ…｣
深澤｢ごめんラウール本当に傷付けるつもりで言った訳じゃなくてその…｣
岩本と、いつの間に入っていたのだろう、深澤の姿があった。

岩本｢ほら。まずは手のテーピング。手貸して｣
岩本が慣れた手つきでテーピングをしている間も、深澤はただ永遠に謝罪と弁解を続けていた。
ラウール｢ね、ねぇ｣
深澤｢何？ごめん俺また何か言葉間違った？｣
ラウール｢そうじゃなくて…だって、悪いの俺なのに、何で…｣

そう、何をどう考えても、ついカッとなって怒鳴ってしまった自分の方が悪いのである。
そりゃあ、悔しかったし、何くそって思ったけども、深澤の言っていた事はもっともで。
気を遣われながら断られたのも、彼なりの優しさで～というのももう充分に理解している。
それなのに、だ。

深澤｢…ラウールは大人だねぇ｣
岩本｢本当だよ、少しは見習えよ｣
その理由を答える訳でもなく、2人はそんな事を言い出す。
テーピングが終わると、岩本は｢はい｣と模擬剣をラウールに渡してきた。