Freiheit ��

＊ ページ12

走って、倒して、傷を受けて、鏡のように跳ね返して、また走って、の繰り返し。
消耗する身体を奮い立たせて、中核の部屋へ辿り着く。
全て白色の部屋。何もない部屋だった、酷く眩しかった。
その中央に立つ、1人の白衣の青年が、岩本を見て興味深そうに笑った。

｢…あぁ、そう。今は君か。…いや、｢君たち｣か｣
岩本｢てめぇか、うちのメンバー攫ったのは｣
｢そう怒らないでくれよ。…いや、しかし、やはり僕の予想は当たっていた。まさか分散しているとはね、あぁ、非常に面白い！｣
岩本｢何言ってんだてめぇ！｣
｢わからないのであればいいさ、鏡の中で精々暴れていればいい！｣

白衣の青年が指を鳴らす。途端にわって出てきた敵に、岩本は舌打ちを鳴らした。
あの男はなんだ、そう考える暇すら与えてくれなかった。
四方を囲まれた敵を、なりふり構わず岩本は斬り裂いていく。
敵は1つの声もあげずに倒れていく。
違和感しかなかった。

されど身体は悲鳴をあげる。跳ね返しがなければとっくに死んでいただろう。
口の中で血の味が蔓延する。
死ぬな、あいつを殺すな、ほとんどそれだけの一心で動いていた。
死ぬな、死ぬな、死ぬな！
俺は、生きないといけない！

どれだけの時間がかかっただろう。
白衣の青年の姿はない、というよりそれを認識できるだけの体力がもうない。
部屋から何とか這って出て、すぐ側の廊下の壁にもたれかかる。
ただ酸素を取り込もうと、荒い息を吐く。
あんなに無茶するな、なんて言っていたが、結局1番無茶をしてしまったのではないか。
そんか考えが頭をよぎった。

何とか繋ぎ直した無線に向かって、息絶え絶えな言葉を吐く。
岩本｢ふっか…ごめん…｣
深澤『おっまえ！馬鹿！何通信切ってんだよ！今舘様と翔太が残り狩ってる！佐久間はあべちゃん連れて帰ってるし、康二は目黒が落ち着かせてる、だから安心しろ！』
岩本｢はは…じゃあ、よかった…｣
深澤『死んだらぜってー許さねぇからな、今救護呼んでるから、絶対死ぬんじゃねえぞ！』

安堵の溜息をつく。
みんな無事なら、とりあえずは大丈夫だろう。
…あぁ、よかった。
……ラウールは、無事なんだろうか。
思考を繰り返す内に、限界を迎えた身体はそのまま意識を無理矢理に落としてきた。
遠くに聞こえた声は、果たして誰のものだったのだろう。

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