10【Starving】 ページ10
「んふふふ、知ってるで？お前が噂のAやろ？」
「噂、って鬱達から聞いたんですか」
「どうやろなあ」
手の温い感覚が目元にじわりと伝わってくる。一歩間違えれば貞操の危機、何なら今すら貞操の危機。緊張感が段違いのアイマスクだ。一刻も早く離れようと何も見えない状態で藻掻いたらふー、と耳に息を吹き掛けられ、その所為で力が抜けてしまって糸が切れたようにその場で崩れ落ちる羽目になった。
あの時窓は開いていなかった筈で、家の鍵も掛けていた筈。サスペンスドラマであれば一発アウトの完全なる密室状態だったこの部屋で、どうして彼が入ってこれたのか。それはまあ、この彼と私以外に誰もいない状況下で「犯人はこの中にいます」と高らかに宣言するようなものなのだけれど。
「あはッ、ほんまに初心な反応すんねんなァ」
「離して、下さ、」
「ん〜？すまんなあ、俺耳悪いねん。もう一回言うてくれる？」
「いやだから目を」
「目ぇ見えるようにしたいん？ほんまにええの？」
「えっ」
「ええんやな、お前が言うたんやからな」
「は？……え、いや、ちょっと」
そして耳元に唇が寄ってくる気配。くふ、と彼が笑う。ただそれだけの行動でも熱っぽい吐息が揺れて、ぞわっと鳥肌が全身に広がった。深呼吸をするように何気なく吐かれた息にも少し反応してしまう自分が鬱陶しい。嗚呼、どうして自分の墓穴を掘ってしまうのだろう。
「ほら、身体は正直やん？」とタチの悪いテンプレみたいな事を彼が半笑いで言うものだから、つい私も後先考えずに「────殺す」なんて言ってしまった。それが一番の悪手だと、言った直後に気付いてしまった。彼の笑う声が聞こえなくなる。熱を吹き込まれた身体の内部が急激に冷めていく。
「────はは、あー、もう、むりやわ、」
がまんできひん。
ぐちゃぐちゃの欲に塗れたその声に、本能的な危険を察知して思いっきりそいつを突き飛ばす。だがそれはひらりと躱されてしまい、私はまたフローリングの冷たく硬い床に押し倒される羽目になった。反射的に顔を上げると、私を上から見下ろす余裕の無い笑顔の彼と目が合って。
「ま、待って、」
「俺『待て』とか一番無理なんよ。今喰いたいねん、焦らさんといてや、なあ」
─────────
ひっそり垢つくりました
(@Stella_Maynard_)
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まも。 - 語彙力が半端ない…好きすぎる。 (3月16日 18時) (
レス) @page20 id: f3d61cfa83 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - やばい…osmnが色気爆発し過ぎてて死ぬ…更新楽しみにしてます！ (2023年2月15日 21時) (レス) @page32 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 更新再会っ！頑張ってください！ (2022年8月20日 14時) (レス) @page32 id: c39d7e026e (このIDを非表示/違反報告)
じばくとっこうたい - お久しぶりです！この作品本当に大好きです。osさんっっと悶えてました。新作もすごく面白かったです！これからも応援しています！ (2022年2月23日 18時) (レス) @page32 id: 8209a7a990 (このIDを非表示/違反報告)
ネロ - 過去最高1位おめでとうございます！！前からでしたらすいません。気づいたので書き込ませていただきました。 (2021年9月12日 19時) (レス) id: 60a73795c6 (このIDを非表示/違反報告)
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