検索窓
今日:3 hit、昨日:15 hit、合計:491,018 hit

5【ラストスイート】 ページ5

藍色が軽やかにベランダへ着地する。藍色の正体は羽の生えた私より少し歳上に見える男性だった。髪も瞳も纏うスーツも、全てが夜をそのまま落とし込んだような藍色。眼鏡の奥で掴めない笑顔が形づくられた。

「夜這いとか、そんな人聞きの悪いことしてへん」
「んぇ〜?見た感じばっちり寝込み襲ってましたやん」
「そろそろ人間に精を植え付けなあかんかっただけやし。俺やって食いたくて人間の女食ってる訳やないもん」
「嘘付けお前昨日も“夜食”食べてはったやん」
「あんなん食べた内に入らんわ阿呆!トントンとかならまだしも大先生には絶対言われたくないねんけど!」


 大先生、と呼ばれた男性はえぇひどぉい、とあからさまに眉を下げてみせた。それに合わせてシャオちゃんとなんとも可愛らしいあだ名で呼ばれた私を襲っていた青年が分かりやすく大きな舌打ちをした。


「こいつは、Aは、俺の獲物や。お前の出る幕は無いからはよ帰れや」
「あのすいません、帰るも何もここ私の家なんですけど」
「えぇ、仲良く半分こしようや」
「すいませんあのちょっと」
「喧しいわ、見境なくそこら辺の女全員に手ェ出して俺の獲物みーんなかっさらってる癖してよう言えたな」
「いやァ、だってインキュバスは元々そういうものやしぃ?」

 黙るしか出来ない私と、私を置いて険悪なムードになりつつある男性二人。いつの間にかシャオちゃん(?)の方にも二対の黒い羽が生えていた。というか待て待て、今何と言った?


「インキュバス?」


 ぐるりと二人分の首が私の方を向く。顔と口だけ達者というかなんというか、なんとなく嫌な感じを覚えてうえ、と不快感に塗れた声を漏らした。




「嗚呼、そゆこと。誰かと思えば“みこさま”やん」




 私の顔を覗き込んだ藍色が、そう小さく呟いた。
 道理でシャオちゃんが欲しがる訳や、と意味深に笑いながら。


「せやで、我ら誇り無きインキュバス。君の大事な物を奪って、そのお礼として奥にいけないものを植え付ける夢魔や」
「─────言う必要無かったんちゃう」
「まぁまぁええやん。Aちゃんから僕が欲しいって言ってくれるまで永遠に付き纏ってやるから、これからよろしゅうなぁ」
「は?だからAは俺が先に見つけた俺の獲物やって言うとるやろ!」
「知ってるで?でも僕も欲しくなってもうたんよ」

 彼の蒼い双眸に、嫌そうな顔をした私が映った。そして、すう、とその目を細めて、



 「絶対落としたるから、な?」

6【FOOLigan.】→←4【欲の悪魔は黄色にあり】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1125 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2955人がお気に入り
設定タグ:wrwrd , 逆ハー , 愛され
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

まも。 - 語彙力が半端ない…好きすぎる。 (3月16日 18時) (レス) @page20 id: f3d61cfa83 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - やばい…osmnが色気爆発し過ぎてて死ぬ…更新楽しみにしてます! (2023年2月15日 21時) (レス) @page32 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 更新再会っ!頑張ってください! (2022年8月20日 14時) (レス) @page32 id: c39d7e026e (このIDを非表示/違反報告)
じばくとっこうたい - お久しぶりです!この作品本当に大好きです。osさんっっと悶えてました。新作もすごく面白かったです!これからも応援しています! (2022年2月23日 18時) (レス) @page32 id: 8209a7a990 (このIDを非表示/違反報告)
ネロ - 過去最高1位おめでとうございます!!前からでしたらすいません。気づいたので書き込ませていただきました。 (2021年9月12日 19時) (レス) id: 60a73795c6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:メイナード | 作者ホームページ:***  
作成日時:2021年1月11日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。