1【終電のち失態】 ページ1
ギリギリで終電に飛び乗って、人が居ないのをいいことに優先席へと凭れ込む。乱れた髪を手で雑に梳かしながら、腕時計の短針と頭の中で下品に笑う上司の顔を睨みつけた。鞄の中をまさぐって手鏡を取り出す動作すら面倒に思えてしまう。きっと今の私はとんでもなく不細工な顔をしているのだろう。可愛い女の子は人が居なくても可愛いだなんて、そんなもの幻想だ。
私の最寄り駅はまだ遠い。ごとごとと安らかな眠りを誘う規則的なリズムに身を任せて最寄り駅のアナウンスで飛び起きるまでが私のテンプレ。勿論安らかな眠りというのは文字通りの意味である。死ぬとかではない。
今日も変わりない一日で、特に何の発展もなかった。仕事的にも、そして恋愛的にも。現在私の齢は25、そろそろ結婚も考え始めなければいけない時期。何なら女が一番魅力を含む時期。久し振りに連絡をとった大学の友人はとっくに入籍していた。それにも拘らず私ときたら、パソコンとにらめっこしてばっかり。ブルーライトに私の秘められし魅力を食い破られているような気しかしない。もうパソコンが恋人でもいいかな。元々魅力無いだろって？うるせえ。
はぁ、と本日数十回目の溜息をついたところで扉が開いた。最寄りの一つ前の駅にいつの間にか着いていたらしい。なんだかんだ言って今のこの帰りの電車に乗っている時間が一日の中で一番心が休まる時間かもしれない。家に帰ってもどうせ寝て起きるしかやることがないのだから。あっ何か悲しくなってきた。考えるのやめよう。正気に戻るな私。
そして扉が閉まる直前に、彼は現れた。
第一印象は、『スーツに着られている』だった。
所々髪先が跳ねており、見るからに高そうな黄色のネクタイは随分と緩んでいる。少しでも激しく動いたら今にも解けてしまいそうだ。顔は興奮したように紅く染まっていて、ほわほわした雰囲気を纏いながらにへら〜っとだらしなく笑っていた。うん、なんというか、その、顔は最高に良いのになんとなく最高にダサい。
恐らく何処かの会社の新人だろう。あの顔の紅潮からして飲み会に付き合わされた挙句上司に散々飲まされて出来上がってしまったといったところか。可哀想に、心底同情する。強く生きてくれよ。
彼のとろとろと溶けているようなアンバーの瞳が優先席に座る私を捉える。私を見るやいなや彼は「しつれいしまぁす」と呑気な声をあげて隣の席に腰掛けた。はぇ、と間の抜けた音が私の喉から漏れた。
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まも。 - 語彙力が半端ない…好きすぎる。 (3月16日 18時) (
レス) @page20 id: f3d61cfa83 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - やばい…osmnが色気爆発し過ぎてて死ぬ…更新楽しみにしてます！ (2023年2月15日 21時) (レス) @page32 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 更新再会っ！頑張ってください！ (2022年8月20日 14時) (レス) @page32 id: c39d7e026e (このIDを非表示/違反報告)
じばくとっこうたい - お久しぶりです！この作品本当に大好きです。osさんっっと悶えてました。新作もすごく面白かったです！これからも応援しています！ (2022年2月23日 18時) (レス) @page32 id: 8209a7a990 (このIDを非表示/違反報告)
ネロ - 過去最高1位おめでとうございます！！前からでしたらすいません。気づいたので書き込ませていただきました。 (2021年9月12日 19時) (レス) id: 60a73795c6 (このIDを非表示/違反報告)
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