117話:蛇語 ページ21
遠くから聞こえた少年の声に、私は目をまたたく。
「ジュンコ? 貴女、ジュンコさんっていうの?」
足を止めて蛇に向かって聞くと、彼女はそうだと言わんばかりに鎌首を持ち上げる。
「そっか。探されてるみたいだけど、飼い主さん?」
「シャッ。シャシャ、シャァッ!」
……うーん、わからん。
一生懸命に意思疎通を図ろうとしてくれているのだけれど、残念なことに蛇語を履修していない私には理解ができなかった。
「貴女を一人にして、飼い主さんと会えなかったら大変だから、見つかるまで私も一緒にいていいかな?」
「シャァ」
小さく一回鳴いた後、こちらにゆっくりと近づいてきたジュンコさんに、肯定の意なのだろうと解釈した私はその場にしゃがみ込む。
「はじめまして、私はAAと言います。昨日からこの学園でお世話になっているんですよ」
「シャァ?」
「事務と食堂の仕事をさせていただいているんですけど……。あ、そういえば、蛇は強い臭いが苦手だと聞きました。私は化粧とか香水はしていないので、多分大丈夫だと思うんですけど、不快だったらおっしゃってくださいね」
「シャァア」
自分自身、なかなかにメルヘンなことをしているな、とは思っている。
けれど、ヘムヘムといいこのジュンコさんといい、この学園の生き物はどうも人間の言葉をわかっているようなのだ。
ならば、動物に話しかける女子高生もギリギリセーフだろう。
それに、こうして話し声がしていたら、ジュンコさんを探している飼い主の少年もこちらに気づくかもしれない。
あまり大声を出すとジュンコさんを刺激してしまう可能性があるので、彼女の所在を叫ぶわけにもいかないのだ。
「ジュンコさんは何が好きですか? 私はね、本が大好きなんです。さっきまでこの学園の図書室にお邪魔させていただいていて──」
「ジュンコに何してるんですか!?」
「ほえ?」
私がジュンコさん相手に本語りをしようとし始めた時、背後から少年の怒気のこもった声が響いてきた。
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真白(プロフ) - わそ姉大好きリスナーさん» ありがとうございます!ホントですか?それは光栄です。天女様系には素敵な作品も多くあるので、私の作品をきっかけに他の方のもいけるようになってくださったら嬉しいです(*´∀`*) (2023年1月29日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
わそ姉大好きリスナー - 面白かったです!自分は天女様系が苦手でしたけど、真白様のこの天女様系はなんかいけました!((^^ω)更新ファイト!!!!です(^^ω) (2023年1月25日 10時) (レス) @page23 id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - 千颯さん» わあああ!ありがたいお言葉ありがとうございます!!!私の更新が千颯さんの生き甲斐になっていたですって……?これからも気合いを入れて更新していきますので、楽しみに待っていてくださいませ! (2022年12月18日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
千颯 - 毎週投稿を楽しみに生きてます( これからも作者さんのペースで頑張ってください!応援してます! (2022年12月11日 11時) (レス) @page18 id: ecd2d0aa76 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - れいらさん» この更新スピードは、れいらさんを始めとする読者の皆さんのおかげなんですよ!ご期待にお応えできるよう、これからも頑張りますね♪ (2022年10月22日 20時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年10月22日 13時