92話:本好きの言い訳 ページ46
「あの、不破さん」
図書室へと向かう道の途中、私はふと足を止めて不破さんを見た。
「どうしたの?」
「先に食堂に寄りたいんですけど、いいですか? 夕飯の手伝いにいつ行けばいいのか、おばちゃんにお伺いしないといけなくて」
本を読み始めると、確実に時間を忘れてしまうのが私である。
しかも、声をかけられても気がつかない。
流石に本と顔の間に手でも入れられたら気がつくのだけれど、声をかけられたり辺りが暗くなったりした程度では全く気にせず読み続けてしまう。
……別に無視しようとしてるわけじゃないんだけどさ。そもそも何も聞こえなくなっちゃうんだよね。
本を読んでいる時の私は、体中の全神経を本に向けていると言っても過言ではない。
用事があるから途中で読むのをやめなければ、という強い意志があれば、アラームが鳴ったことにギリギリ気がつくかな、というレベルなのだ。
そういうわけで、何時に食堂へ行けばいいのか聞いておかなければならない。
そんな感じのことを簡単にまとめて言うと、不破さんは少し呆れたように笑った。
「Aちゃんがすごく本が好きってことはよくわかったよ。そういうことならおばちゃんのところに先に行かないといけないね」
「すみません。御足労おかけします」
無駄に歩かせることになってしまって申し訳ない。
へにょんと眉尻を下げた私に、不破さんが「気にしないで」と微笑む。
いい人すぎる。
こんないい子を私はさっき図書室で詰ったのか、と思うと自分の大人げなさがいよいよ恥ずかしくなってくる。
さっきの不破さんはちょっと怖かった気もしなくもないけれど、それはきっとたぶん気のせいだったのだ。
私が心の中で不破さんを拝みまくっている間に、食堂へと到着した。
144人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わそ姉大好きリスナー - Ahoy 学校行きたくねェェェェェェ 続編に出航〜♪ (2023年1月25日 9時) (レス) id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます!忍たまって鬼滅並みに難読苗字多いですよね笑。尼子先生の出身地の尼崎の地名から取っているそうなのですけれど、私も最初は漢字と読みがなかなか一致しなくて困りました。食満は初見じゃ絶対に読めないと断言できますよね! (2022年8月12日 19時) (レス) id: 23eb6548af (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - マジで夢主ちゃんに同感です。食満って名字、最初は「しょくまん」って読んでしまいますよね。私もアニメで聞くまでしょくまんだと思ってました! (2022年8月12日 19時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:真白 | 作成日時:2022年4月28日 21時