【忍たま】本が読みたい私のそれどころではない室町生活2

58話:ぶち撒く ページ11

「ただ今戻りまし──」

「小松田君っ！」



……デジャヴ。



おばちゃんの手伝いを終えて事務室に戻ると、扉を開けた途端にこれである。


見ると、部屋の中央で丸いお盆を持っている小松田さんが、あわあわと吉野先生に謝っているところだった。

文机の前で正座している先生はというと、小松田さんがぶち撒けたお茶を頭から被ったらしく、びしょ濡れになって青筋を浮かべている。



「よ、吉野先生大丈夫ですかっ！？」



熱湯を浴びたのなら、火傷しているかもしれない。

私が慌てて駆け寄ると、先生はゆるゆると首を振った。



「既に少し冷めていたので問題ありません。すみませんが、片付けを手伝っていただいても構いませんか？」

「わかりました」

「私は学園長先生に呼ばれているので、着替えた後そちらに向かいます。Aさんは片付け終わったら小松田君と正門付近の掃除をしてください」



先生が出してくれた雑巾を手にすると、私は小松田さんを見た。



「すみません、井戸ってどこにありますか？」

「校舎の裏で……水でしたら僕が汲んできますけど」

「場所がわからないままだと困るので、時間はかかりますけど案内してもらえると嬉しいです」



今朝顔を洗おうとしたら仙蔵さんがいつの間にか水を用意してくれていたので、自分では汲みに行っていないのだ。

とても助かったのだけれど、毎日汲んでもらうわけにはいかない以上、井戸がどこなのか知っていなければならない。



……移動中に会話でもすれば、小松田さんともちょっとは仲良くなれる……よね？



未だにこちらを見てビクビクとしている小松田さんを、私は早急になんとかしなければならない。

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