27話:あきらめなかった人 ページ29
細いその身体に、重すぎるほどの責任感と自責の念がのしかかっているように見えて、私は思わず彼女を抱きしめた。
「大人だからって、何でもできなきゃいけないわけじゃないです。……絶対」
シナ先生が背負おうとしているものは、あまりに重すぎる。
先生であることを、誇り以上に重荷と感じてしまうのなら、それはきっと、一人の先生として背負える責任の量を超えてしまっているのだ。
何も知らない私に、シナ先生は悪くないだなんてそんな無責任なことは言えない。
……でも。
でも。
「シナ先生は逃げようと思えば逃げられたはずです。生徒達に殺させたことから目を背けて、見ないふりをしてしまえば、それで良かった」
何か言ってあげないと、そのままポッキリと折れてしまいそうで。
「けど、貴女はそうしなかった。今も苦しんで、悩んでる。……貴女が最後まで「大人」であることを諦めなかった人だって、くの一教室の子達はちゃんと知ってると思います」
許す許さないは別にしても、先生が自分達のことを考えてくれているということは伝わっているはずだと、私は思った。
「そう、なのかしら」
「そうですよ。それにこれからだって、先生は逃げたくないって思ってるんでしょう?」
私の言葉に、彼女はビクリと肩を揺らす。
「でも、もし、貴女が」
……次に
いつの間にか名前で呼んでくれるようになって、信頼してくれ始めたのかと思っていたけれど、完全に心を許してくれているわけではなかったらしい。
「大丈夫。私は天女様とは違います。神の声を聴く聖女でも、人々を癒す力を持つ天使でもないけれど、私が天女になることはありません。誰に何と唆されようと、決して貴女方の言う天女には成り下がらない。約束します」
私は言い聞かせるようにそう言って、「信じてね」と微笑んでみせる。
驚いたように目を見開いたシナ先生は、次の瞬間綺麗な顔をクシャッと歪ませた。
「本、当……?」
「はい、もちろんです」
堪えきれなくなったようにポロポロと涙を流すシナ先生の背中を、私は優しく撫でていた。
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魚月(プロフ) - 小桜さん» わかります!めちゃくちゃあるあるですね!ありがとうございます。参考にさせていただきます! (2022年3月29日 20時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 魚月さん» そうなんです! 私も本大好きなんですよ〜。私の場合は、途中まで読んだ本を栞を挟んだりするんじゃなくて、開いたまま伏せて置くのが許せません! 型が残ってしまうので。……これは結構あるあるなんじゃないかな〜って思ってます! (2022年3月28日 22時) (レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - (続き)夢主ちゃんを究極の本好きにするため、本好きの友人達から「本好きあるある」を募って書いています。私はこうだな、というのがありましたら、ぜひ教えてくださいね! (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます! 夢主ちゃんと気が合いそうとは、小桜さんもなかなかの本好きですね。……実は作者もです笑。 (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - ヤバい……夢主ちゃんの言うことめっちゃ分かる……!! この子とは気が合いそうです! とても面白く、続きが楽しみです。更新頑張って下さい! (2022年3月28日 7時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年3月15日 9時