23話:どっちがホントの ページ25
「あー、シナ先生、これは……」
戸口に立つ女性を見て、竹谷さんが焦ったように弁解を始める。
彼女が誰かはわからないけれど、この三人より安全そうなのは確かだ。
三人の方が彼女より立場が下なのだろうということを瞬時に判断した私は、尾浜さんの手が緩んだ隙にそれを振り解き、ダダッと逃げ出した。
「た、助けてください、お姉さん!」
尾浜さん達三人の奥に彼女がいるため、私は大きく迂回して助けを求める。
そのまま女性の背後に回って、小さくなって三人を睨んだ。
そんな私を困ったように見下ろすと、彼女は尾浜さん達の方を見て溜息を吐いた。
「天女様への干渉は学園長先生の許可を得た者だけ、と言われなかった?」
「うっ……。すみません」
なんと、尾浜さん達は勝手に私の部屋に忍び込んでいたらしい。
てっきり学園長先生の指示で私を見張っているものだと思っていた。
「貴方達の言い分は後でじっくり聞かせてもらうわ。Aさんが着替えるんだから、三人は一旦部屋に戻りなさい」
すごすごと出ていく三人を横目に、私はこてりと首を傾げる。
何故この人は私の名前を知っているのだろうか。
私がむーんと唸っていると、再度こちらを見る彼女と目が合う。
「あら、私が誰だかわからないの?」
竹谷さんから「シナ先生」と呼ばれていたけれど、さっき私をこの部屋に案内してくれたおばあちゃまとこの人は明らかに別人である。
こんなナイスバディなお姉さんとシナ先生が同一人物に見えるのだから、きっと竹谷さんは疲れているのだ。
こくりと頷く私に、彼女は「山本シナよ」と笑みを浮かべた。
「……え? シナ先生って、ほんとにあのシナ先生ですか?」
優雅なおばあちゃまだったはずでは、と目をまたたかせる私に、シナ先生がクスクスと笑う。
「そうよ。どっちも私、山本シナ。驚いた?」
お茶目にパチン、とウインクするシナ先生に、私は密かに戦慄する。
どちらの彼女も所作が年相応で、どっちが本当のシナ先生か私にはさっぱりわからない。
……これがくの一。私がなるのは無理だね。なる気もないけど。
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魚月(プロフ) - 小桜さん» わかります!めちゃくちゃあるあるですね!ありがとうございます。参考にさせていただきます! (2022年3月29日 20時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 魚月さん» そうなんです! 私も本大好きなんですよ〜。私の場合は、途中まで読んだ本を栞を挟んだりするんじゃなくて、開いたまま伏せて置くのが許せません! 型が残ってしまうので。……これは結構あるあるなんじゃないかな〜って思ってます! (2022年3月28日 22時) (レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - (続き)夢主ちゃんを究極の本好きにするため、本好きの友人達から「本好きあるある」を募って書いています。私はこうだな、というのがありましたら、ぜひ教えてくださいね! (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます! 夢主ちゃんと気が合いそうとは、小桜さんもなかなかの本好きですね。……実は作者もです笑。 (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - ヤバい……夢主ちゃんの言うことめっちゃ分かる……!! この子とは気が合いそうです! とても面白く、続きが楽しみです。更新頑張って下さい! (2022年3月28日 7時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年3月15日 9時