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______現金輸送車10億円強盗事件が被疑者死亡で片がついて、早数日。
事件が起こる前日に届いたメールを眺めながら、一人、屋上でタバコの煙を蒸す。
どう考えても奴らが絡んでいる今回の事件。
だが、深く関わっていそうな彼女___黒幕である広田雅美、および宮野明美は銃で自 殺。
事件は奴等の思い通りに闇へ葬られたと言っても過言ではない。
……そんな事件の全貌を知れば知るほど、「馬鹿なことを」と言う思いが募る。
奴等がそう簡単に屈するわけがないというのに。
「しんじゃダメだよ、モロフシちゃん」
銃で自害。……その単語で思い出すのは、いつかの日の勇敢な少女の姿。
彼女が居れば何か変わったのかもしれない、と。
そう考えてしまうのは、責任転嫁をして、自分の罪を軽くするためか。
元より全て、たらればでしかないが。
立ち登る煙を暫し見つめて、視線を手元の携帯に落とす。
そこには一通のメールが表示されていた。
送り主は、宮野明美。
【大君…
もしもこれで組織から
抜けることができたら
今度は本当の彼氏として
付き合ってくれますか?
もし付き合えたら、その
時は、大君を真っ先に紹
介したい女の子が居ます。
その子の名前は、】
「…………松田A、な」
______いつか大くんにも紹介したいの。
前にもそう言って、笑っていたな。
……。
………………。
一体、なんの因果なのだろうか。
あの時も、恐らく俺一人ではスコッチの意思を曲げる事はできなかった。
だが、あの少女はそれを難なくとやって退けてしまった。
来葉峠で世話になったボウヤも、彼女には一目置いている様子が見られた。
そして、アイツも。
「……いつか、こちらから出向く必要がありそうだな」
アイツが実の妹のように可愛がっていた少女だ。
なんであれ、守ってやらねばな。
パタンと携帯を閉じて、吸い殻を足で踏み潰す。
結局今日もメールを消せないまま終わりそうだ。
女々しい男にだけはなりたくなかったのだが。
「ライさん、モロフシちゃんのこと、しなせちゃダメだよ。モロフシちゃんがしんじゃうとね、じんぺーちゃんたちが悲しんじゃうから」
遠目からしか見ていないが、あの時はまだ幼かった少女も、さぞ成長しているに違いない。
……出向くなら、手土産くらいは用意するべきだろうか。
【次編へ続く】
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宮野冬姫(プロフ) - それから、158の絶好の場所というセリフが格好の場所になってます (2022年7月10日 21時) (レス) @page12 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 150のパトカーのサイレンですが、ピーポーピーポーは救急車では? (2022年7月10日 21時) (レス) @page4 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
朱夢 - とても面白いです‼️いつも楽しく読んでます。寒いですが頑張ってください‼️ (2021年12月10日 16時) (レス) id: af58c4fc49 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 更新ありがとうございます。しかし本当に警察学校組は若いですよね…。 (2021年12月10日 2時) (レス) @page48 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
とーふ(プロフ) - 更新ありがとうございます!研二くんとじんぺーちゃん、警察学校組の皆と話している夢主ちゃん可愛い!記憶に残ってないのは悲しいですけどね…これからも更新頑張ってください! (2021年12月9日 18時) (レス) @page48 id: a9336fcc7d (このIDを非表示/違反報告)
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