191 ページ45
.
涙を堪える為に俯いて唇を噛む私の姿に、研二くんは何を思ったのか、徐にその大きな腕を広げて、小さな私を胸に閉じ込めた。
ポンポン、と背中を撫でる一定のリズムが、よく研二くんが口にする「大丈夫」という言葉に聞こえて。
やっぱり、目の前に居るのは研二くんなんだって思った。
「きっとなんか事情があんだろうね。君のこと、ちゃんと分かってあげられなくてごめん。泣かないで」
どうしてこんな全然知らない子供の私にも、研二くんは優しくしてくれるんだろう。
初めて会った時もそうだ。
一人ではしゃぐ私に、研二くんは真摯に向き合ってくれた。
ただ私がかっこいいって言っただけで、着たくない防護服も着てくれた。
ヒーローみたいって言っただけで、かっこいいヒーローになろうとしてくれてた。
……けど、目の前のこの研二くんは、それすらも覚えてないんだ。
ぎゅっと抱きしめてくれる腕が好きだったはずなのに、今は研二くんとの色んな出来事を思い出しちゃって。
泣かないでって言われたのに泣いてしまう。
「______ハギ、お前んなとこで何してんだ?」
「っ!じんぺーちゃん!!」
「は?……おい、萩原……」
「ちょっと待ってなんか盛大に誤解されてる気がする!!!先に言っとくけどこの子俺の子供じゃねぇかんなじんぺーちゃん!!」
「隠し子か?」
「だからちげぇって!!!!」
背後霊の時と同じようにやいやいと叫ぶ研二くんの腕からするりと抜け出して、研二くんの背後から現れたじんぺーちゃんの服にしがみつく。
……じんぺーちゃんの服も、研二くんが着てるのとおんなじ服だ。
青色のシャツで、胸のところに桜のマークがあるブローチみたいなのを付けてる。
じんぺーちゃんのこんな格好、初めて見た。
「お、おい、なんだよお前」
「……」
突然服を掴んできた私に、じんぺーちゃんが困ったような声を上げる。
それだけで分かった。
じんぺーちゃんもきっと、私のことを覚えてないんだって。
「A、どした。寝れねぇのか?」
そう言って優しく頭を撫でてくれたじんぺーちゃんは、ここに居ないんだって。
黙って泣き出す私を見て、目の前にいたじんぺーちゃんが
「はっ?!おま、何泣いてんだよ……!泣くんじゃねぇよ!俺が泣かせたみてぇだろーが?!」
なんて言って、わたわたしながらも私の体を抱き上げる。
……その顔がなぜか、いつものじんぺーちゃんに重なって見えた。
.
2025人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
宮野冬姫(プロフ) - それから、158の絶好の場所というセリフが格好の場所になってます (2022年7月10日 21時) (レス) @page12 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 150のパトカーのサイレンですが、ピーポーピーポーは救急車では? (2022年7月10日 21時) (レス) @page4 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
朱夢 - とても面白いです‼️いつも楽しく読んでます。寒いですが頑張ってください‼️ (2021年12月10日 16時) (レス) id: af58c4fc49 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 更新ありがとうございます。しかし本当に警察学校組は若いですよね…。 (2021年12月10日 2時) (レス) @page48 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
とーふ(プロフ) - 更新ありがとうございます!研二くんとじんぺーちゃん、警察学校組の皆と話している夢主ちゃん可愛い!記憶に残ってないのは悲しいですけどね…これからも更新頑張ってください! (2021年12月9日 18時) (レス) @page48 id: a9336fcc7d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ