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______次に目を開けると、辺りは全く見たこともない景色に囲まれていた。
ランドセルは落っこちる途中に離れてしまったのか、背中にも近くにも見当たらなくて、思わず泣きそうになってしまう。
あのランドセルには、じんぺーちゃんに貰った大切なお守りが付いてるのに。
それに、電話だってランドセルの中だから、これじゃあ誰にも電話が出来ない。
……研二くんの姿だって。
私、もしかして、本当に一人になっちゃったのかな。
「う、うぅっ……けんじくん……ッ」
突然の一人ぼっちに頭が混乱してボロボロと涙が溢れてくる。
もう小学四年生だから、こんな子供っぽく泣きたくなんかないのに。
どこかも分からない草むらに座り込んだまま、私は必死に両手で涙を拭った。
そんな時、ふと地面に影が差して、ゆっくりと顔を上げる。
するとそこには、ずっと思い浮かべていた顔が心配そうに私を見つめていた。
「______どうしたのお嬢ちゃん、こんなとこで。泣いてちゃ折角の可愛い顔が勿体無いぜ?」
拭っても拭っても涙が溢れてくる私の頬に手を添えて、そっと涙を拭ってくれる固い指先。
その手が持つ体温に、あんなにも止まらなかった涙が驚きで止まってしまった。
…………手が、あったかい?
慌てて頬に添えられた両手を掴んで、ペタペタと感触を確かめる。
やっぱり、あったかい。動いてる。ちゃんと、生きてる。
どうして。だって、まだ起きてないはずなのに。
「……研二くん、もう、起きてだいじょーぶなの……?」
「え?」
「痛いとこない?苦しいとこない??看護師さんにはちゃんと言ったの?」
「え、待って待って、ちょっとタンマ!君、俺のこと知ってんの?てか、起きて大丈夫って……俺はこの通り、なんともないけど。入院した覚えもないし……」
「もしかして誰かの親戚の子?そいつと間違えてる?でも俺研二だしな……」と呟く研二くんの言葉に、どくりと心臓が跳ねる。
……覚えて、ない?
ずっと一緒だったのに、Aのこと、覚えてないの?
知ってる人が居た安心感と、忘れられている悲しさが混ざり合って、思わず目の前がぐにゃりと歪む。
だけど泣いていると思われたくなくて、ペタペタと存在を確かめるように研二くんの顔や首を触っていた手を引っ込めて、その手をグッと握りしめた。
目の前に居るのは研二くんだけど、私の知ってる研二くんより若い気がするし、服だって違って、だけど研二くんで。
……もう分かんないよ。
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宮野冬姫(プロフ) - それから、158の絶好の場所というセリフが格好の場所になってます (2022年7月10日 21時) (レス) @page12 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 150のパトカーのサイレンですが、ピーポーピーポーは救急車では? (2022年7月10日 21時) (レス) @page4 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
朱夢 - とても面白いです‼️いつも楽しく読んでます。寒いですが頑張ってください‼️ (2021年12月10日 16時) (レス) id: af58c4fc49 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 更新ありがとうございます。しかし本当に警察学校組は若いですよね…。 (2021年12月10日 2時) (レス) @page48 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
とーふ(プロフ) - 更新ありがとうございます!研二くんとじんぺーちゃん、警察学校組の皆と話している夢主ちゃん可愛い!記憶に残ってないのは悲しいですけどね…これからも更新頑張ってください! (2021年12月9日 18時) (レス) @page48 id: a9336fcc7d (このIDを非表示/違反報告)
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