4話 ページ6
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自信に満ちた笑みを浮かべた男から私は目を離せなかった。
『鬼殺隊……』
詰襟の黒い軍服。赤い刀身の日輪刀を構え、羽織りが揺らめく。
羽織から日輪刀に至るまであらゆる装備に炎を模した意匠が施されている、正しく燃え盛る炎のような男。
……一瞬にして二匹の鬼の頸を断ち、すぐさま私の首に一太刀入れる……
間違い。この男は鬼殺隊を支える「柱」だ。
「少年!今、君を助ける!」
剣を振るう鬼殺隊の男の攻撃を私は交わす。
剣を交わす度に私の首から血が飛ぶ。
日輪刀の切り傷は直ぐに塞がらない。それに、人を食べていない私にとってそれは明確で致命的な弱点。
劣化しても体に染み付いた肉弾戦の力は発揮され、私は体術で応戦する。
「もうやめて…」
泣きそうな声で少年は言う。
鬼殺隊の男にその言葉の本当の意味は理解できていないだろう。
私は「鬼」で、「子供を攫って食べよう」とする「排除対象」。
正直に____勝てる気も、逃げれる気もしない。
剣を握った手の拳が飛んでくる。右に避け、体を揺らしたら一気に体の軸がぶれた。
隙を見逃さない男は私のみぞおちに拳を埋めた。
『(なっ……!少年を、取られた……!)』
痛みより勝った感想。
不味いことに、脇に抱えた少年をするりと抜き取られてしまった。
太い腕に抱かれる少年は木下におろされた。
不味い、不味い、不味い。
少年を奪われる訳には……
あの子にはちゃんとした親を見つけてやりたい。だから______
不意に、焦りに冷たい水をかけられる気がした。
相手は鬼殺隊だ。
だから、私がここで殺されても、少年はちゃんと保護されるはずだ。
ちゃんと保護されて、名前ももらって、それで、里親が見つかる。
なんだ……そっちの方がいいじゃない。
そっちの方が安全で、こんな生活するより余っ程いい。
「ここでじっとしていてくれ。もう大丈夫だ」
少年の頭を撫でて、男は言う。
彼が振り向き刀を構えるのと、私の覚悟が決まったのは同時だった。
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おもち - 赤い花白い花の歌詞が入っていてとても惹き込まれましたー!とても素敵です!!! (2020年3月24日 21時) (レス) id: 2fd70573e8 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - 小説も挿絵も何もかもがとても素敵でした……素晴らしい作品をありがとうございます…… (2020年1月25日 23時) (レス) id: 58113d68f6 (このIDを非表示/違反報告)
モルス(プロフ) - 涙が止まりません……こんな素晴らしい作品をどうもありがとう…… (2019年12月2日 14時) (レス) id: d7cc26133c (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - 香坂さん» 語彙力が!高い!!よもやよもやです……本当に書いていてよかったと感じました!これからも頑張ります! (2019年10月12日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
香坂 - 言葉使いや書き方、表現に引き込まれました。一つの本を読み終えた時のような気持ちになり、とても良い作品だと心から思いました。このお話が読めてよかったです。 (2019年9月18日 17時) (レス) id: c6f322a1f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年8月30日 21時