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37話 ページ39

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熱はそう治まらない。

頭をくらつかせる熱、鼓動を速める熱、下腹部を蠢く熱。




「杏寿郎さま?」




すっかり冷え切った夜道。

彼女を引き留めなかった俺は夜風に揺られ、熱を諌めようとしてる。



甘く綻んだ呼び声が俺の歩みを止めた。



「やっぱり、杏寿郎さまだわ!こんなに暗いのに明かりもなしに何をしていらっしゃるの?」



宇髄によく連れられて行く花街の店の娼妓の少女だった。
長く揺れる黒髪、黒曜の瞳、白い肌、艶やかな唇。艶やかな着物。

囁かれる、杏寿郎、という言葉。



それだけで十分だった。



彼女と精神的に触れ合い、繋がり合う事を拒まれた俺にとって、肉体的な繋がりは俺の焦燥感を誤魔化した。

自分でも最低だと思っている。自覚している。



本格的に恋に落ちた俺は、予想もしない程麻痺していた。

彼女には屈してはいない。人を堕落させる異能の支配も受けてはいない。

ただ、彼女に落ちていった。






「んあっ」






抱き締めたら彼女はどんな反応をするんだろう。


「は…んッ」


深い接吻をしたらどんな反応をするんだろう。




頭を撫で、耳元で囁いたらどんな反応をするんだろう。




「杏寿郎さまあ」




どくんと何かが蠢き、全身を巡る。




_____________『杏寿郎さん』





心底俺は……鍛錬不足だ。

なだれ込む煩悩に劣情。






「もう一回、呼んでくれ」





娼妓に俺はそう言った。



俺はずちなしに彼女を欲した。






「____杏寿郎さまぁ」(『____杏寿郎さん』)






愛、恋、好き。
人でも鬼でもそれは大層魅惑的で美しく見える。

女は一層美しくなり、残酷にも無意識にも望んでいなくても男を魅了し、
男はただひたすらに女に落ちていく。それが本物なら尚更。

純粋な感情ほど美しいものはない。美しいものほど強いものはない。

恋心というやつ、いくら罵りわめいたところで、おいそれと胸のとりでを出ていくものでありますまい。



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おもち - 赤い花白い花の歌詞が入っていてとても惹き込まれましたー!とても素敵です!!! (2020年3月24日 21時) (レス) id: 2fd70573e8 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - 小説も挿絵も何もかもがとても素敵でした……素晴らしい作品をありがとうございます…… (2020年1月25日 23時) (レス) id: 58113d68f6 (このIDを非表示/違反報告)
モルス(プロフ) - 涙が止まりません……こんな素晴らしい作品をどうもありがとう…… (2019年12月2日 14時) (レス) id: d7cc26133c (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - 香坂さん» 語彙力が!高い!!よもやよもやです……本当に書いていてよかったと感じました!これからも頑張ります! (2019年10月12日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
香坂 - 言葉使いや書き方、表現に引き込まれました。一つの本を読み終えた時のような気持ちになり、とても良い作品だと心から思いました。このお話が読めてよかったです。 (2019年9月18日 17時) (レス) id: c6f322a1f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年8月30日 21時

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