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9話 ページ11

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「俺はしばらく付近の山で任務を遂行するようになっている。後で鎹烏を送る。何かあったら俺を呼ぶといい」



『そんなにして頂かなくても……っ!』


遠慮を言えば、煉獄さんは素早く抜刀し私の首筋にあてた。

剣を抜かれる。そこまでは頭の中で咄嗟に理解できたが、体が反応しなかった。



「する必要があるようだが?」

『う"……』



頭の回る人だ。

不意をつかれて、私はげんなりしてしまう。
自分の劣化にもため息が出そうだ。


「現状、君の存在を知るのは俺だけ。隊士に見つかれば問答無用で斬首されるだろう」


泣きわめく少年が私に近づかないように押さえつけられる姿が安易に想像できた。
今度こそ、少年の融通が通らないのは明白だ。

納刀の音が鋭い。


「最近、とある山で鬼殺隊の隊士の多くをなくした。この山に連れてきているのは、階級が高い精鋭だ。今の君では二人がかりで狙われたら、あしらう所か首が危うい」



『では、そのようにお願いします……我儘を申し訳ないです』



間を開けて、煉獄さんが口を開いた。



「君のように穏やかな鬼がいるのだな」

穏やかな鬼……確かに人の味は薄れ、比較的理性の強い方だと思う。
むしろ、こんな藤の近くで暮しているのだ。
自分では認識していないが、狂っているのだろうか……?

『人を食べていませんからね。私は飢餓を通り越して、食欲はありません』

人を冷静に見、食らわずに観察できる鬼は少ない。




「そうではなく、他の鬼とは違った心の豊かさだ」


待ち受けていたのは、予想がの言葉だった。


「君は善悪観や鬼である自分にずっと悩んでいたんじゃないか?」


その見開いた瞳は私の見るかしているの???


『善悪観は……人を食べていた頃からありますね。鬼となって殺生に抵抗があったのも、こうして食べずに暮らしていけるのも、自我がきっと強いから』


「人の食事もとっていると」


『頻繁には口にしません。やっぱり、舌の構造が変わってるんです』


本当にいろいろした。
空腹を誤魔化して、人を食べない為に。



「君は不思議な鬼だ」



その声の穏やかさに私は困惑する。




「俺はもっと君を知りたい」





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おもち - 赤い花白い花の歌詞が入っていてとても惹き込まれましたー!とても素敵です!!! (2020年3月24日 21時) (レス) id: 2fd70573e8 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - 小説も挿絵も何もかもがとても素敵でした……素晴らしい作品をありがとうございます…… (2020年1月25日 23時) (レス) id: 58113d68f6 (このIDを非表示/違反報告)
モルス(プロフ) - 涙が止まりません……こんな素晴らしい作品をどうもありがとう…… (2019年12月2日 14時) (レス) id: d7cc26133c (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - 香坂さん» 語彙力が!高い!!よもやよもやです……本当に書いていてよかったと感じました!これからも頑張ります! (2019年10月12日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
香坂 - 言葉使いや書き方、表現に引き込まれました。一つの本を読み終えた時のような気持ちになり、とても良い作品だと心から思いました。このお話が読めてよかったです。 (2019年9月18日 17時) (レス) id: c6f322a1f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年8月30日 21時

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