百日草 (ページ29)

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黒side

都心の病院まで30分くらいの道のり。病院が貸し出してくれた車に、車いすのまま乗せられた。

おれ歩けるのに。

寝れていないせいか、ろくに食事をしないせいか。ふらふらすることが多くなってることが先生にバレて、長い距離は歩かせてもらえなくなった。

加えて、血圧やら呼吸やらをモニターに管理されてるから車いすの後ろにはたくさんの機械がくっつけられてる。

たった数日で頰がこけるくらい痩せて機械に繋がれた自分。車窓に映る自分が本当に醜く思えてならない。

見慣れた街が近づいてきて、テレビ局やスタジオが見える度に心が締め付けられて痛い。ついこの間までここで毎日のように仕事をしてたのに。今の俺は病院から病院へ移動することすら、人の手を借りなければままならない。

ネガティブなことばかり考えて鬱々としていると、車酔いなのか気分まで悪くなってきてしまう。とんだ貧弱になったもんだ。

お腹から頭まで全部に気持ち悪さが纏わりついてぐらぐらする。

呼吸が浅くなったのか、心拍が乱れたのかなんなのか知らないけど、狭い車内にモニターがけたたましく鳴り響く。

「北斗？どうした？」

「ぅぇ、きもちわる…酔った。」

「うそ、車止めてもらう？戻しそう？」

「いいから、はやくくるまおりたい。そのまま連れてって。」

またこうやって迷惑かけてる。でもこれからは、今の比じゃないくらい迷惑を掛け続けることになるんだろう。

考えれば考えるほど自分が嫌になる。冷たい窓に頭を預けて思考を放棄した。