百日草 (ページ26)

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黒side

「今日からよろしくお願いします。」

「うん。よろしくね。一緒に頑張っていこう。」

ついに入院生活が始まった。病院の服を着ていると、なんだかいかにも病人って感じがして嫌だから持ってきたスエットに着替える。ほら、病は気からっていうやつ。

もう芸能人じゃなくなるのに、いわゆる特別室に入れられる。だだっ広くてあんまり好きになれそうにない。

明日には生検ってやつがあるらしくて今から緊張してる。心配性を拗らせてる母さんから電話もあって、

「明日はお兄ちゃんがきてくれるから。頑張ってね。何か困ったら言いなさい。」

子供じゃないんだから…なんて強がったけど、なんとなく気持ちが楽になったからやっぱり親の力は偉大だなぁなんて思った。

でも足りない。5人の声が足りない。

なんだかんだ常に近くにいてくれた5人が、もうすでに恋しい。そう簡単には会えない存在になってしまったことがたまらなく寂しい。

病院で過ごす最初の夜はポッカリ穴が空いたような物哀しい夜だった。

朝イチで兄が来てくれて説明を受ける。腫瘍の部分が光って目印にする薬を飲まなければならないらしい。怖かったけれど飲まなきゃ始められないと脅されて嫌々飲んだ。

「北斗初っ端からそんなびびってて大丈夫か？今から頭の中検査するんだぞ？」

「分かってるから。余計にビビらせないでよ。」

そんなたわいもない兄弟喧嘩をしてたら看護師さんが入ってきた。

「処置中何か音楽お掛けしましょうか。鎮静剤入れるので少しぼーっとしますけど、麻酔は局所麻酔なので意識はある状態ですから。」

音楽か。SixTONESの曲、聞きたいな。

「あの…Lifetime って曲があって…SixTONESの曲なんですけど。それをお願いできますか？」

看護師さんには、お好きなんですね。なんて笑われてしまったけど。これで頑張れそうだなぁなんて思ったりして。

音楽のおかげか、比較的リラックスして手術台に横になる。薬が効いてるのか、段々頭が霧がかったみたいにぼやぼやしてきて、気づいたら病室のベットの上。

頭は痛いけどどうやら終わったらしい。まだ頭が回ってなくて、兄さんが何を言ってるのか理解できなかったけれどハッキリした頃にはベットの横に先生が立っていた。