さよならにブライダルベールを添えて。

3話 ページ5

諸伏side



今日は俺もゼロも予定があって一緒には帰れなかった
久々に彼女をひとりにさせてしまったことを
少しばかり後悔しつつ、親戚の家から帰る。



『ただいま』



玄関で靴を脱いでいればリビングから顔を出したのは
親が殺されて身寄りのなかった俺を引き取ってくれた
少し遠い親戚のおばさん。

そういう点では柚とは共通のところがあって、
最初は話しやすかったけど罪悪感もあった。
勿論、今はそんなことないけど。



「お帰り、夕飯出来てるわよ」



お玉を持ちながら夕飯時を知らせてくれたおばさんに
一言返事をすると、そのまま洗面所に向かい、
手を洗ってから食卓につく。

美味しい夕飯を食べ終えて、
宿題をしようと2階の自室に行こうとしたときだった。



「っそれで、大丈夫なんですか…？」



切羽詰まったおばさんの声。
いつも落ち着いて優しいおばさんからは
あまり聞かないような声。

心配になっておばさんに近寄れば、
血の気の引いた顔でこちらを見ていた。



『おばさん？どうしたの？』



「景光くん…」



電話を切ったおばさんは一呼吸おいて言ったんだ。
"彼女が交通事故にあって意識不明の重体だ"って。



正直、声すらでなかった。
病院に行く準備をしているおばさんを呆然と眺めて、
聞こえたエンジン音にはっとして俺も車に乗り込んだ

車内は聞き慣れた音楽が無情に流れていて、
病院に着くまで一言も発せなかった。








…
……









病院につくとゼロは彼女が寝てるベットの近くにいた。



辺りを見回しても、やっぱり柚の保護者である
親戚の叔母さんは病院にいなかった。

この時間は仕事だと、いつだか聞いたことがある。
本当に仕事かは分かんないけど、と自嘲気味に嗤った
柚の顔を今でも覚えている。

いつも家に一人だからと、定期的にうちやゼロの家に
遊びに来ていたから、おばさんにも懐いていた。



医者「すみません、小花井さんの状態を
詳しく説明したいので、こちらの方に…」



おばさんとゼロの親が
医者に呼ばれて部屋を出ていった。



『柚、死なない…よな？』



降谷「わからない、けど、
死なない事を祈るしかない」



俺はゼロの横に並んで
白いベットに横たわってる彼女の手を握った。

ほんのり暖かくて、生きてるんだって分かったけど
まだ小さくて細い体には何本も点滴の針が刺さり、
ぐるぐるとそこらじゅう巻かれた白い包帯が
彼女をすべて消し去ってしまいそうで怖かった。

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