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降谷 side
.
……最悪な日だった。
朝からあか……迷惑な客がポアロに来店し、おまけに梓さんは居ないときた。
「……」
「……」
「……えぇと…ねぇ、安室さん、沖矢さん……」
コナンくんの声が聞こえた……ような気もしたが、気の所為かもしれない。
……皿洗いに行こうにも、シンクにはもう皿は残っていない。
それに、もし皿洗いに行っている間に客が来たら対応が出来ない。
客のどちらかが何かを頼んでくれれば良かったのだが。
「助けて！！」
唐突に、ドアが開く音と、そんな声がした。
咄嗟に何かをできる訳もなく、俺は声に釣られそちらを向いた。
―ただ。
その光景が、異常だった。
まずその声の主が5、いや4歳程度の幼女だった事だ。
これだけならまだ、子供のお遊びかなにかでポアロに来たのかもしれないと思ったのだが。
その幼女の腹部には、大きな赤い切り傷があって。
血が、ドクドクと流れ出していた。
「！？その切り傷は！？」
コナンくんが声を張り上げて訊いた。
だが、問答の時間は無いらしく。
「取り敢えず目に付かなければいいんです！！奥に行けますか！？」
俺は即座に頷いて、その幼女をカウンターから奥の台所の、見えにくい所に案内した。
幼女は、突然ある事を言った。
「なにか口にできるものをください、食べかけでも飲みかけでもなんでもいいんです」
俺はキッチンに置いてあるペットボトルを掴み、幼女に渡そうとした。
……俺の、飲みかけの。
いくらなんでもそれはまずいのでは無いだろうか。いや緊急時にこんな事を言っている場合では無いというのは分かるが。
そんな俺の迷いを知ってか知らずか、幼女は俺の手からペットボトルを奪い取り、ゴクゴクと飲み始めてしまった。
半分より少し少ないくらいになったペットボトルから口を外し、幼女は言った。
「男性が来たら、数秒でいいので、時間を稼いでくれませんか？」
……どういう、意図なのだろう。
いや、ひとまずその男性が危険人物かどうかを確かめなくては。
そう思い店内へ駆け戻る。
「安室さん！さっきの子は！？」
「分からない、ただあの傷で動けているのは不自然だ」
そう……そこだけが、分からない。
飲食物を要求した事に関係はあるのだろうか。
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