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he's an enigma. 8 ページ12

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扉をゆっくり開けるとそこには診察室があった。

部屋の真ん中にはベッドがあり、その上に寝そべっている人がいる。

真っ黒なジンベイから覗く腕や脚から、顔にまで至る所に痛々しい包帯や傷跡。

その人は起き上がる力もないのか、白銀の瞳だけをこちらに向けた。
黒髪に白眼がとても映えていて、美しいと感じてしまうほどだった。

でも、どこか寂しげな雰囲気を感じる。
まるで死期を悟ったような目つきだ。



「誰だ」



痛々しい体とは対照的に頭にまで響くような重い声で問われる。
ここで初めて自分が知らない人の診察室に入ってきてしまったと、気が付き慌てて答えた。


「あ、怪しい者ではなくて、あの。道に迷ってしまって」


手を振ったりして誤魔化そうとするが、全く効果はないようだ。
彼はため息をつくと、体を起こした。


「__を買いに来たんだろう、ついてこい」

「え、あ」


僕の手首を力強く掴むとそのまま引きずられるようにして、何処かへ連れていかれる。

最初の部分を聞き取れずに、一護(イチゴ)の元に戻れるんだろうか、なんて考えながら僕は彼に着いていった。
しばらく歩くと一つの部屋にたどり着いた。

中は薄暗く、甘いような独特な臭いが鼻につく。
窓はカーテンで覆われており外の様子は伺えない。

奥にも部屋があるようで扉が若干空いている、甘い香りはそこからか。

でも、一護(イチゴ)が居ないということは。


「あ、いや、多分ここじゃ……」

「あっている。お前も人間を買いに来たんだろう?」


軽蔑するような視線を向けられながらも、僕は必死に首を横に振って否定する。

こんな学生服姿の子供に向かって人間を買いにきたなんて、どんなホラーだ。


「あー……えっと貴方ぐらいの身長で前髪で目が隠れている男の人を探してて」


身振り手振りで説明すると、少し悩んだ仕草をした後に納得したようで、次は部屋から出て二階へ向かう。


案内され、階段から一番近い部屋に入ると、そこは書斎のような場所で沢山の本が並んでいる。
本棚にはぎっしりと隙間がないほど詰め込まれていた。
机の上には読みかけの本や書類などが置かれており、ここの部屋の主はかなりの読書家なのだとわかる。

そんなことを考えていると机の近くにある椅子に腰掛けて、本を読み出す白眼の男。


「座って待ってれば、すぐくる」


そう言ってぽんぽんと隣の席を叩くので、恐る恐るそこに座ると、再び読書に戻ったようだ。




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夕夜 - とっても面白いです!続き待ってますね。応援しています!! (5月7日 22時) (レス) @page43 id: 19daafe7ae (このIDを非表示/違反報告)
地銀(プロフ) - kemさん» ありがとうございます!CSSは自作です( ; ; ) (2022年7月31日 4時) (レス) id: ace2098bf5 (このIDを非表示/違反報告)
kem - めっちゃ面白いです!!!!CSSってどこのつかってますか?? (2022年7月31日 1時) (レス) @page19 id: c443e77f26 (このIDを非表示/違反報告)
地銀(プロフ) - あーちゃん様さん» 有難うございます!頑張ります( ; ; ) (2022年7月29日 1時) (レス) id: ace2098bf5 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん様 - 更新待ってます‼めちゃめちゃ面白いです‼ (2022年7月28日 19時) (レス) @page7 id: 875565d54e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:地銀 | 作成日時:2022年7月28日 7時

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