この薄汚れた世界の中で

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｢立花､A……何してるの?｣


困惑混じりの､でも透き通った綺麗な声が部屋に響いた｡

慌てて立花さんから距離を取り､声のした方へ目線だけ向ける｡
本能的に､視界から完全に立花さんを外すのは危ないと思ったから｡


目線の先には､冷静にこちらを見据える神谷さんの姿｡逆光で表情までは分からない｡

神谷｢聞こえなかった?お前ら､今ここで何してたのかって聞いてるんだけど｡｣
その声は先程の困惑混じりのものとは違い､微かながら苛立ちが込められていた｡

それもその筈｡
こっちはただ睨み合っていただけだが､
神谷さんの位置からは"2人が接吻を交わしている"とも見て取れる｡
どちらにせよ､よろしく無い事は明白だ｡


普段の私は立花さんと仲が良いから､神谷さんは後者だと思ったのだろう｡

『質問に答える気が無かったので､詰め寄られただけです｡で､何の用ですか?』
神谷｢……潤がお前の事探してたから呼びに来た｡それだけだよ｣
『そうですか｡今行きますね』
私はとにかくこの場から去りたくて､
では｡と言い残すと､足早に退室した｡


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神谷｢で､立花は何を聞こうとしたの?｣
立花｢神谷さん､Aの過去知ってます?｣
神谷｢僕はDABA結成当初から居るから｡それなりには知ってるつもり｣

立花｢俺にも教えて下さ｢それは出来ない｣……どうして!｣
神谷｢判断するのは僕らじゃない｡
それに｣




そこで神谷は言葉を止め､立花を見やる
その顔は悲痛に満ちていて､今にも涙が零れ落ちそうな程､儚かった｡

神谷｢きっと僕の口から聞いても､今のお前は受け止めきれないよ｡
……僕がそうだったように｣

言葉に詰まる立花を置いて､足早にその場を後にする神谷｡



立花｢A……お前､何を抱えてるんだ?｣
会議室には､苦しそうな立花の呟きだけが残っていた｡

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