愛することが罪ならば。09 ページ19
．
狡い人だと、彼女は言った。その通りだ。俺は狡い。ずるくてずるくて、
きっと彼女が考えている以上に中身は汚い。何人もの人が、俺を狡い奴だと言った。
別に訂正はしない。その言葉通り、俺は狡くて自分勝手だからだ。
「っ、ん…！」
それはまるで、あの映画の、ヒーローになり損ねた男のように。
頬に流れる涙の感触が、分かる。微かに震えている唇をそっと離した時に、
彼女はまた、泣いていた。
「好きだよ。」
一言、空気に委ねた言葉。
「好きだ。アーヤのことが。」
溢れる感情をそのまま、なんの偽りもなく。
「世界で１番、好きだよ。」
誰よりも。どんな人よりも。
「だから、」
俺は、狡い奴なんだ。
「お前のことは、絶対に離さないよ。」
自然に湧き出た笑みを浮かべながら、彼女を抱きしめる。
腕の中で、ダムが決壊したかのようにボロボロと涙を流す彼女に、またも笑みが零れた。
泣き虫、と笑っても、彼女はいつものように睨んではこない。
「ごめんね、アーヤ。」
分かってたんだ。ちゃんと、分かってた。
俺と一緒の未来を歩んだら、きっとアーヤは沢山辛い思いをして、沢山苦しい思いもする。
嫌なことを拒否することも許されないまま、俺が長年されたみたいに、ずっと監視されて。
俺と関わらなければ知らなくて良かったことを、アーヤは知っていかなければならない。
自分の全てをデータ化されて、まるで商品の見本のような目で見られる屈辱を、本来ならば知らなくていいはずなのに。全部、全部。俺と一緒になったら。俺のそばに居たら。俺と未来を歩んだら。
けれど、きっと優しいお前は迷わずに俺の手を取る。
それが分かってるから、それが分かってるから、俺は。
「ごめん、」
だから、いつか彼女を解放したときに少しでも苦しくならないように。
彼女に伝えずに、心の奥底に仕舞いこんでいた２文字。
「俺、」
脳裏で、男が女に背を向けて歩いていった光景が、静かに溶けていく。
「もう、アーヤの事離せないんだ。」
どんな綺麗事も、彼女への想いに比べたら敵わない。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 24人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Kobato*(プロフ) - 凛奈さん» 本当にこっちが感謝です（笑）更新したときには、是非読んでみてください＊ (2017年7月9日 16時) (
レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - 凛奈さん» いやいやいや…！凛奈さんのコメントにどれだけ書く気を貰っているか…！正直に言うと、新しい作品を作ったときや更新したときに凛奈さんがコメントしてくれないかなぁ〜って思うことよくあります（笑）毎回毎回素敵な感想も頂いて…！ (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - ?0704さん» 今、またなんとなく書きたいものが浮かんでいるので更新したときは是非読んでみてくださいね！ (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - ?0704さん» ありがとうございます！この話は私が書く話の中でもすごく深いものといいますか…とりあえず上手く表現したいことが伝わるか不安だったんですが、そういってもらえて本当に嬉しいです！黒木は本当に泣けますよね(´；ω；｀) (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - まみさん» 更新履歴まで見ててくださったんですね…（涙）更新遅くてごめんなさいＯｒｚ、こちらこそまた時間がありましたら読んでやって下さいね＊ (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Kobato* | 作成日時：2017年6月11日 19時
