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2nd track ページ4

「プリント。ぶちまけた?手伝うよ」

彼はしゃがみこんで、私の落とした紙を拾い集める。

「あ、りがとう」
「え?あ、うん。兄ちゃんならこうしてただろうなって思っただけだし、気にすんなよ」

彼は柔らかいタレ目を細めて笑う。つんつんとハネた髪や、不良との噂があったが、なんだ、いい人ではないか。

奇異な目で見てくる他の人とは違う。至って普通だ。誰も寄ってこないのに、そういう点では、この人は特別だった。
私が呆然と立ち尽くす間にも、彼はどんどん集めていく。ふと我に返って、彼にならった。綺麗な鼻筋が視界に入る。

「やっべ。このやつ忘れてきたやつだ」
「え?」
「ま、出さないけど。でもあいつ面倒なんだよなー、グチグチうっせえし」

口を尖らせながら纏めるその姿は、普通の男子高校生。最初に思った、大人っぽい雰囲気とは違う、素敵な素顔。私は思わずくすり笑う。

「あ、やっと笑った」
「やっと、だっけ?」
「ん。さっきまで暗い顔してた。転入生だったよな。綺麗な髪してるし、こういう立場って目立つし、あんまり得意じゃないって顔してた」

彼はよく見ている。もしかしたら、教室でもそう思われていたのかもしれない。
ただ、綺麗な髪、と言われたのは初めてだった。少し、顔が熱い。映らないように、私は目を背ける。
彼はよしっ、とプリントを叩き、提出箱に入れた。

「本当、ありがとう」
「気にすんなよ。
……あ、名前忘れてた。俺は山田二郎。よろしくな」
「詩音Aです。改めて、よろしく」
「おう」

にっと微笑むその笑顔は眩しく、私は緊張していてた新しい生活から、少しだけ楽になれた気がした。

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ゆゆ - あと銃兎さんと独歩さん推しなのが一緒で嬉しかったです! (2019年5月26日 14時) (レス) id: b6b1790fec (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 初コメ失礼します!銃兎さん登場回数多めですね笑銃兎さん最推しなのでめっちゃ嬉しいです!お話も読みやすかったです!また来ますね! (2019年5月26日 14時) (レス) id: b6b1790fec (このIDを非表示/違反報告)
エレン(プロフ) - 名無しさん» 申し訳ありません。修正箇所を見落としているのですが、もしよろしければ場所を教えて頂けないでしょうか (2018年5月23日 19時) (レス) id: a16f57eab6 (このIDを非表示/違反報告)
エレン(プロフ) - 夢花 ゆめいろ星(スター)の夢花さん» ありがとうございます!楽しんでいただけたら嬉しいです!いってらっしゃいませ〜! (2018年5月23日 19時) (レス) id: a16f57eab6 (このIDを非表示/違反報告)
エレン(プロフ) - 名無しさん» あららら、ご指摘ありがとうございます! (2018年5月23日 19時) (レス) id: a16f57eab6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エレン | 作成日時:2018年2月9日 7時

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