[Elext City] Ⅱ (ページ37)

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あの子を助けなきゃ、あの子は人間で、機械なんかじゃない。
飼い殺すような真似をして出来上がった世界なんて、必要ない。
壊さないと、あの子を助け出さないと。
大多数の享楽の為に、あの子が犠牲になる世界なんて、壊れてしまえばいい。

《■■■さん、俺、あの人の事助けたいんです》
バグなんて呼ばれるようになった頃、NPCのはずだったあの子が声をかけてきた。
《■■■さんだって、そうでしょう？誰かの犠牲に成り立つ娯楽なんて、あっていい訳がない》
驚いた。もうNPCとなった彼等はそんな事気にもせずに飼い慣らされているもんだと思っていたから。
《幸せに、なれないね》

今思い返せばそうだ。彼はあの子の事をとても慕っていた。
あの子が自慢げに「俺も慕われるような先輩になったんだよ」と言っていたのを思い出す。
彼はバグの自分に協力をしてくれた。今やリーダーになっているであろう、1つ下の後輩にバレてしまえば速攻何かされるかもしれないのに、手伝ってくれた。
…いいや、もう隠すような真似はやめようか。

阿部はきっと自分の存在に気が付いている。
バグの存在ではなく、自分が何者かという事も。
だから俺は逃げた。捕まってしまえば、あの子はきっと飼い殺されたままになるから。

きっかけ、世間一般にはそう呼ぶのだろう。
神官NPCが誰かわからない、正真正銘モブのNPCに変わったタイミングを狙った。
警備していたのであろうNPCを蹴散らして、ドームの中へ侵入する。
誰も入ってこれないように、妨害プログラムを作り上げて。
…こっちだって、開発に携わっていたプログラマーなんだ。ただのNPCなんかに解ける訳がないだろう？