メンズルール(倉安BL) 前編

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『親友』の二文字は、その日も揺らいだ気がした。

「え、なぁ、あの…今日一緒に帰ろう言うたん
俺にその、莉子ちゃんのことを報告する
そのためだけに言うたん？」
「せやで？」

何の考えもなしにそう答えると、ヤスは驚いたような戸惑ったような、ちょっと悲しんでるような
何とも言えない顔をした。

え、そんな顔されても。
だってそれ以上でも以下でもないし。
とはいえ…少し申し訳ない気分もした。

「何で？どうしたんヤス？」

そんな風に聞いても

「ん、ううん！何でも！」

なんて答えるし

何でもない人は何でもなんて言わへんやろ。
お前も俺の事親友と思ってくれてんちゃうの？

俺は何でも言うてるつもりやのに
何でお前は何も見せてくれへんの。

何となくモヤモヤしたまま「じゃあここで」って帰ろうとしたら、袖を掴まれて


「…好き」


心臓を鷲掴みされたような感覚は、気のせいなんかやないと思う。たぶん。

「…あ」

たぶん友達としてやんな。
俺がちょっとイラついてんのバレたんかな。
ヤスほんま言葉足らずなとこあるから。

潤んだ目でその一言だけ言われて
告白されたかと思ったやん‪w

さっきの感覚を、頭の中で《びっくりした》なんて簡単な言葉に変換する。

「俺も好きやで？ヤスのこと」

いつもの優しい言葉に、素直やない「ヤス重い‪w」なんて言葉を返して。

不服そうやから大まけにまけて指切りげんまんもしてやった。
ヤスはこういうの絶対守りそうやんな、俺と違って。

バイバイ言い合ってから、家路を急ぐ。
ヤスと話した後は大抵気分がいい。
見上げれば今の気分みたいに雲ひとつ見当たらない夜空に、満月が浮かんでいた。


(…でもなぁ…やっぱ気のせいちゃうよな
何やったんやろあれ)

今度こそは心の中に、さっきの言葉が残って、どこか引っかかったような気がした。

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