メンズルール(倉安BL) 前編

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ヤスに飲み付き合ってもらって
帰りにふと通りがかった駅前。

『知ってるー？ここって永遠に結ばれるってジンクスあるんだよ』

だいたいの内容は覚えてたけど
美香、あいつどんな顔してたっけ。

こんな些細な思い出でも大切にしてたら
今も、もしかしたら。

「おーくらそーゆージンクスとか興味無いやん‪w」
そう、あんまり覚えてないのはそのせいもある。
内容覚えとっただけもう奇跡に近い。

喉の奥につっかかったものを吐き出すように、ジンクスについて話した。
そしたらヤスは俺の手を握った。

その瞬間、また思考が停止する。
あれーなんやったっけな、この感覚。
ついこないだも味わったような…

「おーくらはさ、」

ゆっくりと、考えながら、ヤスが言葉を紡いでいく。
その言葉が、止まった脳に少しずつ溶けていく。

「誰にでも優しくて、素直で…よぉ食べて笑って。人のええとこをよぉ見てて。
素直なとことかが邪魔して上手くいかへんこととかもあるやろけど…
俺はおーくらが好き。大好き」

真っ直ぐな目で
一生懸命にな顔で告げられた好きという言葉が
友達としてのやつやろけど、その時やけに心に残った。

「おーくらのことちゃんと見てる人は、ちゃんとおるから
少なくとも俺がおるから。
ずっと、見てるから」

心の中がじんわりと暖かくなって。
何となく、その時の俺にはその言葉が、ずっと親友でいる約束みたいに思えた。

…心強かった。

かと思えば続きでこんなことを言い出す。

「俺はその…乳もないし、下半身に余計なもんついてるし、肩幅広いしおーくらの寂しさ物理的に埋めんのは、難しいかも知れへんけど」

いやそんなん知ってるし。
この言葉の意味だけは何回考えてもまじで分からん。

心は寄り添ってあげたいとか
しんどい時も楽しい時も、言ってもいいし言わなくてもいいし
傍に居て欲しい時は絶対飛んでくとか。

そんなん、俺なんかに使ってええ言葉とちゃうって‪w

「俺代わりに彼女にはなられへんやんかぁ…」
「なりたいん？‪w」
「なりたいよ！楽しそうやん！‪w」

いやいや、どうやって俺らが別れたかほんまに分かってる？‪
俺最低な男やのにw

ヤスはどうやら酔ってるらしい。

なんて。
真剣なのは分かってるけど、真剣極めすぎて変な方向行ってもうてるから、「酔ってんの？」なんてからかっては肩を抱いた。

「ありがとうな、ヤス」

違和感にはまた気づかないフリをして、心からの感謝をその一言に込めた。

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