メンズルール(倉安BL) 前編

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甘いものが苦手な俺にとっては
バレンタインは一番縁遠い行事。

やと思ってた。

「忠義、バレンタイン作んで」
「…嫌や、めんどい」
「作ろーや！」
「んえ〜…」

ゆっくり振り向くと章 大はキラキラした目でこっちを見とった。
…かわい。

「だが断る…」
「嫌やー！俺が忠義と一緒にやりたいの」
「んん…」
「俺も食べるから！」
「わーったって…」

仕方なく二人でキッチンに並ぶことに。

「トリュフ作りたいねん、いっぱい」
「ええけど俺は食わへん」
「ちょっとは食うてやぁ
ほらトリュフやったらお酒とか入れやすいやん？たぶん」

見上げて俺の袖を引っ張る章 大が可愛らしい。
おっと？これ思ってたより楽しいんちゃう？

そんな気分になって、気づけば乗せられるようにチョコを溶かしていた。

単純すぎるやろ俺…どうした？寝起きやから？

思いつつも、隣で「んー、そろそろかなぁ…」なんて言うてる章 大を見てたら、何かどうでも良く思えてくる。

今日のこの瞬間を、全部シャッター切って残しておきたい。
真っ直ぐに作業に向かう目は、たぶん俺の事を考えてて、それが何か愛おしく思えた。

形を作って、ココアパウダー塗して。

「あとは冷やせばOKやな」
「うん」

章 大の手を取って、ココアパウダーの付いた指を舐める。
一瞬驚いたけど、直ぐにニヤッと笑った。

「何ぃ？したいん？」
「どうせ冷やしてる間暇やろ？」
「せやなぁ」

「やったらお楽しみの時間にしよ」

そう言って、唇を押し付けて、頬の内側や上顎を舌で味わう。
味見したからか、ほんのりとチョコの味がして甘かった。

うん、甘いのはこの程度で十分。
そう思いつつ二人でベッドへと向かう。


…その後出来たトリュフは、ほとんど章 大の胃袋に収まったことは言うまでもない。

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