メンズルール(倉安BL) 前編

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昼休み、二人でラーメン食い行こかーってなって歩いとったら

ヤスが不意に足を止めた。

何かなって思ったら、夏祭りのポスター。
浴衣姿のカップルの後ろ姿が描いてある。

…行きたいんかな？浴衣デート。

「…男二人で花火見ても風情も何もないやろ」

それでも一応、ちょっとしたツッコミのつもりで言ったら
「ないなぁ…」なんて普通に返される。

あれ、行きたいわけでもないんかな。
ヤスが行かへんのやったら俺も…人混みそんな好きちゃうし。

「それに俺ほら、元彼女とか来てそうやからパス」

さすがにそれやったらヤスも気使わへんやろ。
思ったところで、ふと生じた疑問。

「…ヤスは気にせえへんの？」

好きやったら…少しは気にしてくれるんちゃうの？

「重要なんは今やし」

…そっか。せやんな。
大事なのは今、俺とヤスがこうして隣に居ること。

そんなことを考えてたら

「忠義くん？」

聞き慣れた声に顔を上げる。
ヤスの手がそっと離れるのが分かって、心にひんやりとした寂しさが残った。

「久しぶり」

話しかけてきたのは美香やった。
当たり障りないこと言って適当に乗り切ろうと笑顔を作る。

でも美香は「その……………」と何か言い淀むような雰囲気で切り出した。

え、まさか。
何となく、ヨリを戻そう的な展開を想像して。

どうしよう、なんて思う自分に戸惑う。
俺、綺麗な女の子が好きやったんと違ったっけ。

まあ、そん時言われたことは、結局大したことでは…いや、テストに関してやから俺にとってはある意味大したことやったけど。

と、その時


「あ、安田くん昨日はありがとね？」


え？
思わず美香を厳しい目で見つめてしまう。

昨日？
昨日は…ヤスはバイトやったはずやけど。
いつの間に二人で会っとったん？

てか、ヤスは俺が好きなんちゃうの？


「…昨日って何」

美香が去った後、ヤスに聞くと

「美香ちゃんが店来たんよ、マルとバ先一緒なんやって」

そんな風に返されて、思わずほっとする。
マルと一緒やったんか、そっかそっか。
せやんな、売上がどうとか言うてたもんな。

ん？何でほっとしたんやろ俺。
…まあええか。

「何で昨日言わへんかったんよ」

安心の余り笑顔を浮かべて、ヤスに問いかけたけど

「言うほどのことちゃうし」

ヤスは何故か拗ねたようにそう答えただけやった。

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