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13時 ページ9

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無タイトルと、
あと昔流行ったバラードを歌ったあと


渋谷さんはおもむろにギターのケースを開いた。


その中にギターを横たわせる。




「もうおしまいですか?」


「お腹減ったから」




ほら、と見せる腕時計は
13時をさしていた。




「まだ帰らへんの?」


「んー。もう少しここにいます」


「…ほな、また月曜日」




渋谷さんはギターケースを手に
土手を上がっていった。


ゲームが終わったのか、
野球少年たちは寝転んだり水分補給をしたりしている。


寝転んだ先には
青い空に白い雲が浮かんでいて


深く息を吸って、目を閉じた。






__




_







それから、私は土曜日が来ると
土手へ出かけるようになった。


渋谷さんが先にいる時と
後から来る時と、来ない時と。


会えた日には
話をしたり歌を聞いたり、


会えない日には
野球少年たちの声を聞きながら昼寝をしたり。


いつの間にか私のお気に入りの場所になった。




一度だけ、


「私が来るようになって迷惑してませんか?」


と渋谷さんに聞いたことがある。




きっと渋谷さんにとっても
お気に入りの場所なわけで、


そこに大して仲良くもない
職場の後輩がやたら来るだなんて


迷惑でしかない気がした。



でも、




「迷惑なわけないやろ。土手は誰のもんでもないし」




渋谷さんはそう答えてくれた。


だから私もその言葉に甘えて
土手に通っているのだ。





ハロウィンの日は平日だった。


仕事終わりに予定があって
土手を通りかかった時も渋谷さんはいて



「街中もテレビもハロウィンばっかで疲れてもうてん」



と、ため息をついて、
らしいことを言っていた。


用を済ませてから
また通った時には


渋谷さんはもういなかった。





.

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はるまる(プロフ) - のるさん» コメントありがとうございました!!いかがでしたでしょうか!次回作もぜひ(^^)! (2019年12月13日 18時) (レス) id: 74b7d9762d (このIDを非表示/違反報告)
のる(プロフ) - いいですねぇぇっぇぇえ (2019年12月10日 10時) (レス) id: f5d566c6da (このIDを非表示/違反報告)
のる(プロフ) - な…何があったんですか!? (2019年11月19日 17時) (レス) id: f5d566c6da (このIDを非表示/違反報告)
のる(プロフ) - この平和な感じ……いいですねぇ!続き楽しみに待ってます! (2019年11月18日 8時) (レス) id: f5d566c6da (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はるまる | 作成日時:2019年10月13日 19時

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