隣にいること

＊ ページ23

*kiriyama*




僅かな胸痛と、喉の違和感。

嫌な予感と若干の息苦しさに体を起こすと、分かりやすく楽になる呼吸。


嫌でも3年前を思い出してしまう。


ほんま、最悪のタイミングやな。

薬は手元に無い。だからと言って救外に行くほどでもない。

それに、淳太くんの診察を受けへんかった手前、他のドクターの所には行きづらいんよなぁ。


最近、疲れが溜まってたんやろうか。それか、仮眠室の空気があんま良くなかったのかもしらん。

どちらにせよ、ひどくなる前に手を打たなあかんな。



とりあえず仮眠室を出て医局を通り、廊下の自販機で水を買う。

これを飲めば少しは落ち着くはず。


大した距離を歩いたわけやないのに息切れがして、喉の奥の方で微かにヒューヒューと音がする。

自分の呼吸音が、真っ暗な廊下に響くように聞こえてきて、少し怖くなった。早よ仮眠室に戻ろ。



水を飲んで、


なるべく前かがみになって、


落ち着いて呼吸して、


そうすれば、



そうすれば、、、





桐山「、、んぅっ、ぐふっ。ゲホッゲホッ、ひゅっ、ゴホッゴホッ、ひゅー、はっ、はっ、ひゅー」






ゆっくりと飲んでいた水が気管に入り、思わず口に含んでた水を吐き出す。

反射的に咳き込み、そのまま立て続けに咳が出て止まらへん。あかん、完全に発作になってしもうた。


濡れた服が体に張り付いて、冷たい。そうやん、なんで冷たい水にしてもうたんやろ。冷たいもんは気管支を刺激するから避けなあかんかったのに。






桐山「ゲホッゲホッ。ひゅー、ひゅう、ひゅー。っはぁ、、」





咳は落ち着いてきても、喘鳴が止まらん。

それに、さっきよりも息が吐きにくくなってきた。


どうする？

このままじゃ回復は期待出来ひん。

呼吸器まで行くか。とりあえずそこまでたどり着ければ吸入でも何でもあるやろ。

意を決して立ち上がり、仮眠室を出た、


…ところまでは良かったんやけど、






桐山「はぁ、はぁ。ひゅー、、ゲホッゲホッ、っ」






酸素の入ってこない体の限界なんて目に見えている。もう足が前に出ぇへん。

とうとう、廊下の壁にもたれかかるようにしゃがみ込んだ。

必死になって酸素を取り込む。



そうや、電話、、

誰か、誰でもええから、出てくれ。。。


言うことを聞かない指先を無理やり動かして、適当に通話ボタンを押す。





『もしもし、桐山先生？どうかされました？…先生？先生？！』








目の前で画面の光がゆらゆらと揺れていた。

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