糸師凛の記憶 ページ9
▲
──糸師凛には忘れられない少女がいる。
胡桃沢A。緩く波打つ髪につるりとした大きな瞳、華奢な手足と小柄な体躯は、見た者の庇護欲を掻き立てる。
そんな少女と凛は、幼い頃に出会っていた。
何故あれほどの美少女と、“不細工”である凛が知り合いなのか。
それは簡単、彼とAがいわゆる幼馴染という間柄であったためである。誰もが羨むポジションだ。勿論凛とて、さりげなくだが自慢に思っていた。
………凛と関わることによって、彼女が虐められていることを知るまでは。
小学生の頃、放課後はいつも彼女と一緒に帰宅していた。その日も、凛はAをクラスまで迎えに行った。そして扉を開き、彼女の名を呼ぼうとした瞬間だった。
凛が手を伸ばす前に扉が開き、そこからボロボロになったAが、頰に涙の跡を残しながら飛び出してきたのだ。
白い頰は赤く腫れ、いつも綺麗に整えられていた髪は、誰かに掴まれたかのように乱れていた。瞳には今にもこぼれ落ちそうな程の涙が張っており、瞬きによって煌めきと共に雫が落ちる。
息を呑んで固まった凛は、次の瞬間、自分では制御し切れないほどの怒りが体に渦巻くのを感じた。
誰だ、と心の中で唸る。俺の幼馴染を、大切な少女をこんなにしたのは──
『あ……りん、くん……』
しかし凛は、Aが気まずげに視線を逸らし、青ざめた表情をしているAに気がついた。
咄嗟に痛いのか、やら、誰にやられた、など沢山のことを問い詰めた。
だが一向に口を開かないAに、凛が焦れたように彼女の腕を掴んだ、その瞬間であった。
『り、凛くんには関係ないよ……っほんとに、大丈夫だから！』
『───は、』
凛の腕を振り払い、顔を歪めたAが顔を背けた。
その態度凛が苛立ちを覚えたのも束の間、あ、と凛の脳内にとある思いがよぎった。
──幼馴染が、Aが、こうやって暴力を振るわれていたのは自分のせいではないのか、と。
その疑問を抱いた瞬間、凛にはそうだとしか思えなくなっていた。
そりゃあそうだ。誰もが認める完璧な美少女であるAと、不細工である自分。周りのものがどちらを好きになるかなんて決まっている。
───Aが凛と仲良くすることで、不利益を被っていたのだとしたら。
ひゅっ、と凛が息を詰めた。耳の奥で嫌な音が鳴り始める。
もしかして全て自分のせいではないのか？
彼女は俺を庇ってこんな傷を受けていたのでは？
優しい幼馴染のことだ、俺を馬鹿にされて言い返したりしたのかもしれない。自慢ではあったが、Aとは仲が良かったから。
ああ、ああ！！もしかしたら───
▲
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 795人がお気に入り
「ブルーロック」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まったり団子 - ｳｯｳｯ･･･最高だ･･･特に糸師兄弟が揃いも揃って盛大に勘違いしてるのが･･･これからも読ませてください！お願いします！ (2月24日 20時) (
レス) id: f793216af5 (このIDを非表示/違反報告)
みるく - 結葉さん» ありがとうございますーー！🥹これからも応援してくれたら嬉しいです (12月13日 22時) (レス) id: df78d63940 (このIDを非表示/違反報告)
みるく - あいらさん» 返信遅れて申し訳ないです😭冴はもうすぐ出てきたますので、是非お待ち下さい！ (12月13日 22時) (レス) id: df78d63940 (このIDを非表示/違反報告)
結葉(プロフ) - 更新待ってます”！！！！！！！！ (10月12日 10時) (レス) @page31 id: 119a923417 (このIDを非表示/違反報告)
あいら - このお話が大好きです！早くカイザーやネス、冴に会ってメロメロにしてほしいです！ (10月12日 5時) (レス) @page32 id: 2148135a94 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みずき | 作成日時：2023年1月29日 21時
