探偵達はカフェにいる【オリジナル】 (ページ7)

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ルヴァンシュに自家製コーラをページ7

　何でも屋という職業は、テレビや映画なんかではよく聞くけれど、まさかうちの常連として来るだなんて誰が予想しただろうか。

「ようAさん、今日も来たぜ。やっぱ一日のスター(・・・)トはマスター(・・・)の店に限るな」
「ありがとうございます、ルヴァンシュさん」
「じゃあいつもの宜しくな。あの味はやっぱり廃(スター)れないぜ」

　来店早々下らないジョークを言って私をフフッと笑わせた彼こそが、ルヴァンシュ・フロイデその人だ。２７歳の青年で、弟のラルム君を仕事の相棒、ラルム君の友人のグレース・ウェーヴァーちゃんをバイトとして「何でも屋フロイデ」を営んでいる。犯罪や人道に反する事──例えば別れさせ工作とか──それ以外なら仕事を受けてくれる何でも屋さん、とホームページで謳っていた。

　おまけに彼も探偵として活躍をしている……まあ、うちの常連１０人全員探偵なんだが。何でも屋って一番探偵に近い気がするなあ。本人も「まあほぼ同じようなもんかな？」と言っていたくらいだし。

　ちなみに、この店に初めにやって来たのはルヴァンシュさんだ。カフェ経営初心者……某番組風に言うならば「はじめてのますたー」だった私の為に店の調度品を揃えてくれたり、作ってくれたりした彼らには本当に感謝をしている。当時右往左往していた私は、その親切に感動して「来店時にはお会計半額にします！未来永劫！」という経営が傾いて一発首吊りエンドに行きそうな発言に「いやあ、俺達ゃ商売ですから。お気持ちだけね」とこれまた親切に言ってくれた。

　それからは、よくこの店に顔を出してくれている。弟のラルム君曰く「腰の重い兄ちゃんがカフェに通うなんて珍しい！」らしい。腰が重い何でも屋とか聞いた事がないぞ。理由がふと気になってルヴァンシュさんにその事を伝えると「アンタの所の自家製コーラが気に入ったんですよ。定期的に飲みたい味だぜ」と答えてくれた。

　最初は実験的に作った自家製コーラがまさか好評を得るなんて誰が思ったであろうか、製作者だって驚いていますよ、ええ。水と上白糖、クローブ、カルダモン、シナモンスティック、バニラビーンズにレモン、酸味を加える為に追加でライム。これだけで完成するお手軽ドリンクが好評……嬉しいなあ。目標の渋いマスターから離れている気がするけれど。前回の黒ごまバナナスムージーといい。

「お待たせしました、コーラです」
「おお、これこれ。ありがとうなAさん」

　でも、幸せそうな表情をしているお客さんを見ると、やっぱこれも悪くないなって思うよな。