探偵達はカフェにいる【オリジナル】 (ページ24)

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フィザルモニカはムジカを探してページ24

　今、私は少し困った状況の中にいる。お昼の混雑が緩和して一息吐けると思った矢先のお客さんが、まさかあの有名なミュージカル女優のフィザルモニカ・ノーテンだと誰が想像できるだろう。いやあ……しかし美人さんだなあ。あの赤くて長い髪、猫みたいなキャロットの目。24歳の若さで三人の子持ちなんだと。今度彼女が出ているミュージカル見に行こうかな。

「貴方が噂のAさんですか？」
「はい。カフェ『レッツェル』のマスター、Aでございます」
「あの〜ムジカって、来てます？」
「いいえ、来てませんが」

　私の言葉を聞いたフィザルモニカさんは、がっくりと項垂れて大きな声でため息を吐いた。心なしか、結んでいる髪もしんなりとしている。

「ムジカさんに御用があったのですか？」
「今日、うちの子供達の面倒を見てもらう予定だったんですけれど……気づいたらいなくなっていて。全く、どこへ行ったんだろうあのチョコバナナ！！」

　チョコバナナ？って一瞬疑問符が浮かんだがすぐに意味が分かった。あの跳ねっかえった黄色い髪がバナナで、眉毛と顎髭のアンバーがチョコ……それで「チョコバナナ」ってわけか！なかなか面白いあだ名じゃないの。的を射ているし、覚えやすい。次ムジカさんがお店に来た時は、サービスとしてチョコバナナを出そうかな、ヒヒヒ。

「あの、フィザルモニカさん。待っている間に何か飲み物はいかがでしょうか」
「え、良いんですか？」
「はい。遠慮なくご注文ください」
「じゃあ、ミルクティーをお願いします」
「かしこまりました」

　初めましてのお客様は結構久しぶりな気がする、いやぁ腕がなるな。ミルクティーの美味しい淹れ方は、第三話を参照してね。フィザルモニカさんは砂糖を入れる派なんだろうか。ええと、シュガーポッドの中は……うん、砂糖をギッチギチに詰めているから大丈夫だ。

「お待たせしました、ミルクティーでございます」
「ありがとうございますAさん」

　一口啜ったフィザルモニカさんは表情をパアッと明るくさせた。

「おいしーッ！凄く美味しいです！舌の肥えたムジカが通う理由も分かるなあ」
「ありがとうございます」

　その時、カランカランとベルの音が響いて、あの自己主張の強い黄色い髪がドアから覗いた。

「ムジカ！」
「ようフィジー」
「探したんだからね！！どこに行っていたのさ！」
「……えーと」

　ムジカさんは困ったような表情になって言った。

「殺人事件に、巻き込まれちまってさ。解決したけれど」

　ありゃあ、やっぱり探偵って大変なんだなあ。