秋13# 葵と家 ページ15
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「……ゲームの勝敗に、父さんたちのことなんて関係ないだろ。俺が鬼道家の子供だからって手加減しているならやめてほしい。俺は、Aと正々堂々全力で戦って勝ちたいんだ」
「ゆうと様……」
「あと……ごめん、そんなこと言っておいてなんだけど、俺とのチェスは楽しくない?」
「え」
「気を悪くしたらごめん。ずっと笑ってくれないから」
Aは数秒黙り込んだあと、二度瞬きをして口を開いた。
「私は、ずっと笑んでいるつもりでしたが」
「え」
「……すみません。表情筋のかんけいだそうで。私は笑んだり、怒ったり、けっこう顔に出しているつもりなのですが、周りからはそう見えないらしいのです。無表情ばかりなのは交渉のカセですから、祖父にもなんどもお叱りを受けました……」
そう言って彼女は静かに眼鏡を取った。それがショーウィンドウからアメジストが取り出されるようで、好きな人へ宝石を送るうら若き男の気持ちになる。
「このめがねも……父が、その表情のなさをごまかすために贈ってくれたものです」
「そうだったんだ」
「……たいへん、失礼いたしました。これからはできるだけ表情を」
「いや、そのままでいいよ」
頭を下げた彼女が、その姿勢のまま固まった。鬼道は続ける。
「俺は君と対等でいたい。無理して表情を動かす必要なんかない。俺がAの思っていることを、分かるようになればいいんだ」
「ゆうと様……」
「ね。だから」
「……承知、いたしました」
白い駒をそっと摘む。カツンと小さな音を立てて、最初の位置へ置き直した。
瞳が鬼道へ向く。
「全力で、やらせていただきます」
……葵色、だ。
その目を見て初めて、鬼道はアオイ科の花の名がついた色を思い出した。
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杳覇(プロフ) - に近い感じかな……? 私の作品の中ではかなり短くまとまると思うんで、暇なときに覗いてくれると嬉しいです! 更新がんばるね〜〜!! (2021年10月8日 12時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 初見朧さん» 初見朧ありがとう〜〜!! バチくそに頭良い子なので私に書き切れるかどうかは賭けです🙂 選手に指示を出してゲームを組み立てていく司令塔よりはマネジメントに近い役割だけど、そういう認識でも大丈夫です! フィールドメイキングするスタッフ (2021年10月8日 12時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
初見朧(プロフ) - あっどちらかと言うと日常の練習での司令塔という感じっぽいね(↓設定までしか読んでなかった) (2021年10月8日 11時) (レス) @page6 id: 2897e279c0 (このIDを非表示/違反報告)
初見朧(プロフ) - 遅れました!!わー作ってから一週間経ってるー(棒読み)頭良さげな子だね!(語彙力はテストで溶けました)選手じゃないっぽい?司令塔の補佐みたいな感じかな?楽しみにしてるね!頑張って!! (2021年10月8日 11時) (レス) @page2 id: 2897e279c0 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 白雪林檎さん» コメントありがとうございます✨ わ〜〜昔から読んで下さってるんですね! めっちゃ嬉しいです…!! ありがとうございます☺️💓 お褒めのお言葉も光栄です✨ 更新頑張ります!! (2021年10月7日 6時) (レス) id: 1cd5a8a31d (このIDを非表示/違反報告)
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