73話 嵐の前の ページ37
「A、どうしてっ──」
俯いて歯を食いしばっていた守がガバッと上げたその頬に、そっと手を添える。
ハッと守の目が見開かれ、黒い瞳は冷静さを取り戻していく。
そのまま守が落ち着く時を見計らって、言葉を紡いだ。
『守、思い出して。相手が修也でも、別の知らない誰かでも、守のやるべきことは一つでしょ』
「……!」
『雷門を強くして、フィフスセクターを倒す。……しっかりして、
「A……」
少し俯いて、瞼を閉じ、……やがてふっと口角を上げた。
僕も安心して、手を離す。
「すまん、取り乱した。そうだよな」
『……僕もごめん。守に隠し事ばっかりで』
「いいよ。Aが隠し事するのは、全部俺や人のためだって分かってるからさ!」
さ、食べようぜ。と守は元気よく「いただきます」をして、自信作のハンバーグを食べ始める。
さっきまでシリアスな空気だったことなんか微塵も感じさせず、美味しそうに頬張る彼を見て、思わず笑みが零れた。
僕もいただきますと手を合わせ、それに手をつける。
「……でもさ、何か悩んでいることがあったら、迷わず相談しろよ」
守の優しい口調に、思わず手が止まる。
温かい目。
慈愛に満ちた視線。
「俺たち夫婦だろ。中学生の時は何もできなかったかも知れない……けど、今の俺なら、お前を守ってやれる」
『守……』
「もちろん、無理に聞いたりしないからさ」
『……ありがとう。けど、今は本当に充実してるんだ』
本当、怖いくらいに。
これが嵐の前の静けさなんじゃないかと疑うくらいに。
フィフスセクターの懸念はあるけれど、それについては僕の他にも動いてくれている仲間がいるし。
「そっか! 良かった。けど、ホントにいつでも言ってくれよな?」
『うんっ』
……そのまま話は、今週末のデートに移った。
その日は僕たちの「両想い記念日」。
守と付き合い始めた日。
……高校生のときは失敗しちゃったけど、今回は守のほうから提案してくれたんだ。
覚えててくれて、嬉しかった。
57人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
杳覇(プロフ) - パティあすさん» パティあす様ーー!!あけましておめでとうございます!!あああ嬉しいです(T ^ T) 本年もどうぞ、天空の巫女をよろしくお願いします!! パティあす様も、今年一年、良い年になりますようにっ。 (2021年1月1日 16時) (レス) id: 37d55cd9aa (このIDを非表示/違反報告)
パティあす(プロフ) - 新年明けましておめでとうございます!いつも更新楽しみにしております!今年も頑張ってください!杳覇さんにとって良い一年になりますように。 (2021年1月1日 15時) (レス) id: eca4eceaa9 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - ぴのさん» びのおおおありがとうーー!!あ、それねえ……ちょっとしっかり考えてます(笑) がんばるね!ありがとう!! (2020年11月9日 6時) (レス) id: 37d55cd9aa (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 続編おめでとぉぉ!やっぱり円堂は東雲ちゃんに勝てないのね(笑)今世間諸々忙しいと思うけど、更新楽しみにしてます! (2020年11月9日 0時) (レス) id: 5f84d6c253 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 星熊さん» ドルーー!!ありがとーー!!頑張りますっ!! (2020年11月8日 20時) (レス) id: 37d55cd9aa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:杳覇 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Detectivec4/
作成日時:2020年11月8日 18時