鱗のつばさ (ページ15)

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story14 ページ15

side監督生
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素敵な歌だと思った。

いや、それ以外の言葉が浮かばなかった。

穏やかで波風の立たない沖みたいな優しく伸び伸びとした歌声。

それでいて内容は深海の底でひっそりと身を寄せ合い絆を育んできた人魚の悲しい歌。

一冊の本を読んでいるような歌だと思った。

昔々、ひとりの人魚がいました。

美しい声と強い力を持つ僕は周りの人魚から怖がられていました。

しかし君だけは違いました。

いじめられていた君は僕に救いの手を差しのべてくれました。

それから僕と君はたくさんのことをしました、来る敵を薙ぎ払い、歌を歌い、勉強をして、やがて僕は君に恋をしました。

恋とも呼べない醜い感情を君は許してくれた。

もう僕は、君しか見えない。

恋に焦がれたひとりの人魚。

まるで私にそっくりだった。

それからセイレーン先輩はたくさんの歌を歌った。

陸に憧れる人魚の歌にそんな人魚の願いを叶えた魔女の歌。

煌々と燃える火を持った蝋燭が歌う歌に、ポップが大好きなデザイナーの歌。

彼の歌はさることながら、それを支える三人の演奏も素晴らしかった。

足並み揃った演奏は生半可な練習ではできない、本当に心が繋がった人ではないとできないような。

「じゃあ最後に、一曲いいかな。これは僕が療養中に書き上げた歌なんだ。アズールは何回か一緒に練習してくれたけど、ジェイドやフロイドと演奏するのははじめて。どうか優しい気持ちで聞いてほしい」

これは、ひとりの人魚に恋をした女の子の歌。

そう続けて口を開く先輩の目は、恋をした者の目だった。

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