戦える６５ ページ16
――随分と、酷いことを言ってしまったと思う。
強い威力の、冷たさを伴った攻撃に対抗するべくガードを前だけに集結させ、どんどんと力を削り取られる中でちらりと見えたその頬に、一筋流れた涙が見えたような気がした。
完全に、敵対視していた。
記憶が曖昧とはいえ、一度攻撃を仕掛けられた身だ。そこに事情はないと思っていた。ただのEランク嫌いだと、そう決めつけていた。
冷静に考えてみれば、この人は人の上に立つまとめ役なのだ。そこに理由がなければ攻撃などしてこないだろう。
きちんと対面したのは、一応二度目になるだろうか。丁度廊下の角を曲がったところでぶつかりそうになり、よろめいた。「ごめん」と言いかけた及川さんは私だと認識した瞬間、たぶん、息を止めた。
「すみません」と形だけ謝って通り過ぎようとした私を引き止めたのは及川さんだ。
『おい』
『……何か』
『すみません、だけ？』
『は？』
『っだから！ お前、本当になんも覚えてないのかよ！』
額に青筋を浮かべ、周りのことも気にせず怒鳴り散らした彼に思わず後退る。その剣幕に怯んでしまったことが悔しくて、舌打ちをした。
敵だ、Eランク嫌いだ、そう喚き立てるばかりの人だと思い込んでしまった。
『貴方に興味ないんで覚えてません』
突き放すような言い方。悪意ある言い方。
思い込んで間違う、性格もいいとは言えない自分の性質をこれほどまでに後悔したことはない。
傷ついたような顔と、彼が咄嗟に握ったネックレス。それを見て違和感を覚えた。
――あのネックレス、私の部屋に飾ってある奴と同じだ。
そもそもあれは特注品だ。透明な硝子玉の中に秋桜の押し花があって、それにチェーンを通してもらったもの。同じものを持つ人などいないはず。
反射的に顔を見る。通った鼻筋、ぱっちりとした瞳、引き結ばれた唇。それがバランス良くおさまっている、綺麗なラインを描く顎。どこか見覚えがある。既視感はあった。けれど“最低ランク”と馬鹿にされることが嫌で仕方なくて、意図的に考えないようにしてきたこと。
彼の顔は、私の母に本当にそっくりだ。
息が止まったような、心地がした。
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油揚げ(プロフ) - 設定とかすごく面白くて，ついつい一気に読んでしまいましたwこんな素敵な作品に出会えて良かったです！ (2021年11月9日 5時) (
レス) @page21 id: 19252ecbde (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - レイさん» 返事が遅くなり申し訳ありません！なんと3DSの時から！とても嬉しいです……！気が向いたときにでも読んでくださると嬉しいです(*^▽^*)コメントありがとうございます！ (2020年4月2日 11時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 更新ありがとうございます！自分がスマホ持ってなくて3DSの時から読んでいてお気に入りだったので嬉しいです！無理をしない程度更新頑張ってください！ (2020年3月26日 22時) (レス) id: 860c0e78fc (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - あぐりさん» コメントありがとうございます！そしてお待たせいたしました！変わっていく兄妹と、その周りについても書いていきたい所存でございます！お楽しみ頂けて幸いです……！ありがとうございます！ (2020年3月10日 20時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
あぐり(プロフ) - 更新ありがとうございます！ ずっと待っていたので更新されて嬉しいです！ここからの夢主と及川さんの兄妹としてどんな風に関わっていくのか楽しみです！更新頑張ってください！ (2020年3月10日 15時) (レス) id: e34e873475 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志織
| 作成日時：2017年1月22日 16時
