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夢の中のよう ページ7

Aの質問に太宰は心底不思議だ、というように首を傾げる


「…?何って、私の部屋なのだけれど」


「そういう事ではないんです…!


こんなに汚い部屋初めて見ました!!


どれだけ蟹缶好きなんですか!」


そう言いながらそこら辺の蟹缶を片付けていると、「うーん…、そうは言っても、私家事できなくてね…、それに、その蟹缶私の夕飯だし」


「え?」


下を向いていたAが顔を上げる



「…真逆、毎日このような食事を?」



日本酒に、蟹缶、最悪だ


「うん」なんてこくり、頷く彼に、Aの中の家事本能が弾けた








「…ー駄目、駄目です、こんな不健康な生活ッ!」








急に叫ぶAに、流石の太宰も目を見開いた


「Aちゃん?」


立ち上がってズカズカと玄関へと向かう彼女に、太宰は声をかける






「少し、待っててください」


振り返ったその目は家事に燃えていた









太宰は鳶色の瞳をまん丸にして二、三度瞬きをした



「カレェだ」



ぽつり、ほかほかのカレェライスを見て呆然とする太宰に、Aは部屋を片付けながら言う


「今日私が作ったんです


どうぞ食べてくだい」


そう促せば、太宰は何処か呆けたまま、カレェを1口


ゆっくりと噛み締めて、少し目を見開くと、彼は黙ってもぐもぐと食べ始めた


そんな光景を見て、Aは自分の行動に疑問を抱いていた



(私、なんで太宰さんにこんなことしてるんだろ…)


好きでもない、どちらかというと嫌いだというのに、今だって放置されていた食器を洗う手が止まらない



(母性本能ってやつかな?


だってこんなに酷かったら見過ごせないもん)



それでも玄関を掃く手も止まらない



(まぁいっか、悪いことしてるわけじゃないし)



…と、自己完結した頃には洗濯機を掛け始めていた






居間へ戻ると、空になった皿を太宰はじっと見つめていた


その妙な光景に、Aは「太宰さん?」


太宰の前に座るも、太宰は黙ったまま


無表情のまま皿を見つめ続けるという奇行に、Aは若干の焦りを覚える


「太宰さん?どうしまし…ー」








「美味しかった、カレェ」








ぽつり、葉っぱの様な呟き


「久しぶりに食べたんだ、こんな美味しいご飯」


夢の中のような、彼の言葉は、なぜだか私の心を酷く掴んだ




「…太宰さん」




返す言葉が見つからなくて、名前を呼ぶと









「ねぇ、私の家政婦さんになってよ」

さぁ、利害は一致した→←阿鼻叫喚



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 太宰治   
作品ジャンル:恋愛
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輪廻 - 前作も素晴らしい作品でしたが、今回もとっても面白くて、キュンキュンしております!( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )❤︎この小説、もう更新はなされないのでしょうか?とっても面白いので、国木田さんの言葉の続きが気になります! (2022年5月8日 8時) (レス) @page12 id: 3d9ac3cda8 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - 甘党主義者さん» こんにちは!コメントありがとうございます!前作から…!とっても嬉しいです!ほのぼの恋愛を目指しているので、少しでもゆったりしつつ、きゅんきゅんして下されば幸いです!これからも頑張ります!(´∀`*) (2018年3月22日 23時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
甘党主義者(プロフ) - こんにちは、読ませていただいています! 前作から読み始めているんですけど、凄い面白いです(*^^*) これからも更新、楽しみにしています!! (2018年3月22日 8時) (レス) id: 5924d6346b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:AS | 作成日時:2018年3月19日 16時

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