私と一緒にいてくれた恩人【太宰治】

第211話 あの日の言葉 ページ18

ある少女は云う。









「生きている意味が分からない」









と。ある人は返す。









「何故？」








と。少女は云う。









「好きなものも、大切なものもないから」









と。ある人は返す。









「死にたいと言うことですか？」









と。少女は笑う。








「だってこの世の中つまらないんだもん」









ある人は云った。崩れない表情を僅かに怒りに染めながら。






「貴方の命は人100人分の命があっても足りません。








貴方が死ぬのは許さない。








もし、本当に死にたいのであれば、









100人、殺してからにしてください」






少女は返す。









「私はそんなに大した人間じゃない」






と。ある人は笑う。









「大した人間ですよ、貴方は」









「だって」








「貴方は」








「この私を」








「変えた(狂わせた)のだから」

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