さよなら、ユウミさん ページ42
「まぁ、ほんとにこのレシピ集を頂いても?」
「はい。リーハさんに、このレタスのスープをお家でも召し上がって頂きたくて……」
「それはリーハ君が喜びますね。」
「ええ、嬉しがるに決まってます。張り切って毎日作りますよ。」
喜ばないよ、嬉しくないよ、ちっとも。
ユウミさんに会えなくなるばかりか、レタス責めに合うのか僕は………。
僕はレタスが大っ嫌いだって事を、お母さんはいつも忘れてしまう。
最低だ、最悪だ。
どうしてこんなに上手くいかないんだ……何もかも……
それから僕は、「リーハさん!レシピ集を見つけましたよ!」「リーハ君、良かったね。」「もう出発するわよ。」などと声をかけられて、階段を降りて来た三人の後にぼんやりと従った。
リーオックさんが「あばよ。」と声をかけてくれたみたいだけど満足に返事もない内に僕は、気がつくとコノハヅキさんの車に乗せられていた。
「駅まで送ってくださるなんて悪いですわぁ。荷物も少ないのに。」
そうは言うものの、お母さんはどっかりと僕の隣の席に腰を下ろしている。
「いえいえ、僕も街に用事があるのでお気になさらないでください。」
窓の外では、ユウミさんがにこやかに手を振っている。
お母さんが「では、書類は後ほど送りますわ。お手数をおかけしてすみません!」と言うと、ユウミさんは頷いた。
「はーい大丈夫です!リーハさんもアンジェラさんも!お体に気をつけてくださいね!」
僕も最後に何かを言いたかったけど、それを考える時間も言う時間もなかった。
コノハヅキさんは静かに車を発進させた。
ゆっくりと動きだした外の世界を見るうちに、僕の心は後悔でいっぱいになった。
お母さんとコノハヅキさんの前で涙ばかりは溢すまい、と必死でこらえながら、僕はだんだん遠くなって行くユウミさんを見つめていた。
少しずつ、僕の青春時代というものが終わって行く気がした。
グッバイ、サンクチュアリ。
さよなら、ユウミさん………。
車は10分と経たない内に駅へとすべり込んでいた。
駅は人でごった返していて、車から降り立つと身の置き場も無いほどだ。頭がクラクラした。
コノハヅキさんとの別れはあっけないものだった。
コノハヅキさんは二言三言お母さんと挨拶した後、僕にただ一言「さよなら。」と言って微笑み、手を振り、僕の返事も待たずにまた車に乗り込んだ。
そのあっさりした所が、もう僕を同じ空間の人間とは思っていない証拠に思えてまた気持ちが沈んだ。
もはやドラマ中毒→←今年もよろしくお願いします!by木の葉月
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作者名:木の葉月&シャーロック | 作者ホームページ:https://twitter.com/Sherlock_Rio
作成日時:2020年11月13日 12時