もうおしまい?! ページ33
そう、僕は一人、部屋に戻ったつもりだったんだけど……
「なんでお母さんがついて来るの……」
「アンタの荷物を纏めるためよ!当たり前でしょ?どうせまだ片付けてないんだろうし。」
お母さんは僕の後ろにピッタリくっついてどすどすと階段を上り、気がつくと僕を追い越して3号室の扉にたどり着いていた。
でも、扉は閉まっている。鍵は僕のズボンの中だ。
そして、僕は絶対に開けないつもりだった。
しかし……お母さんはいつの間に入手したのだろうか。
スカートのポケットからスペアキーを取り出すと、難なく扉を開けてしまった。
「ほら、急がないと!予約した列車は夕方6時発だけど、それまでに街に出て買い物をしたいから、とっとと終わらせましょ!」
え………?!
「きょ、今日の夕方6時?!」
「そうよ〜。ちゃんと二人分予約したわよ。」
「そんな……嫌だ!今日なんて!」
「何寝ぼけたこと言ってんのよ。アンタの一人暮らしはもうおしまい!」
もう……おしまい?!
本当に本当におしまいなの?!
愕然としている僕をよそに、お母さんは「あら、これは本当にちょうどいいわ!」と言いながら、まだ部屋に残っていた、僕が高校の寮からサンクチュアリへ引っ越す時に使った箱のふたを開けて荷物を詰めていく。
「荷物が少ないから楽〜!箱は用意して来なくてもちゃんとあるし。シャーロックさんの言ってた通りにして良かったわ。あの人はほんとに有能ねえ。私が頼まなくても、スペアキーまで作ってくれたもの!」
リーオックさん………
「マフィーさん、僕もお手伝いをしましょうか?」
コノハヅキさん………
3号室の扉からひょっこりと顔を出したコノハヅキさんは、両腕の袖をまくった。
「あらあら、そんな、悪いですわ。」
「良いんですよ。僕も、ここに越して来た時にはリーハ君に荷物運びを手伝ってもらいましたし。」
それから……。
この部屋の主である僕は何一つ手を出していないのに、一時間と経たずに荷物は全てまとめられてしまった。
もちろん、それを僕はただ黙って見ていたわけじゃない。ちゃんと妨害しようとした!
でも荷物の詰まった箱を蹴飛ばそうとした瞬間、にこやかなコノハヅキさんに後ろから腕を掴まれたのだ。
掴まれただけじゃなくて、やんわりと変な方向に捻られた。
それで、断念せざるを得なかった。
「さ、これでおしまい!思ったよりも早かったわ。グリーンリーフさんのおかげね。」
お母さんは手のホコリをパンパンと払った。
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作者名:木の葉月&シャーロック | 作者ホームページ:https://twitter.com/Sherlock_Rio
作成日時:2020年11月13日 12時