第肆章・「理由」 ページ4
「はぁ・・・・あのさぁ、毎日毎日僕の部屋に侵入して僕の母親の写真盗んでさ・・・
お前、一体何がしたいわけ? 何で母親の写真盗むわけ? 理由は?
意味分かんないんだけど・・・・・しかも僕に捕まったら素直に毎日返すし・・・」
理由、か・・・
「だって私、恩人の写真一枚も持ってないんだもん。しょうがないじゃん」
にっこり笑って早口でそう返した。
その言葉を聞いて疑問に思ったらしい紅覇が掴んでいた手の力を少し弱めた隙に
掴まれていた腕を離し、両手が使えるようになってから
片手で抱えていた写真立てを両手で持って紅覇の体に押し付けるようにして渡した。
「よーし、城へ帰るかぁー!」
自由になった両手で伸びをし、紅覇に背を向けて城へ向かう。
不思議そうな顔をした紅覇の視線が痛いほど背中に突き刺さるような感覚を感じるが
完全に無視して足を進める。
数歩遅れて紅覇もついてくる。
行き先は同じ。
――――――煌帝国の城。
*
紅覇と会ったのは十二歳の時。
今では幼なじみって関係かな。
私は薬学のことについてだけなら結構分かったりする神童だった。
それは父親が薬剤師だったからっていう影響があったからだけど。
幼い頃からよく父親が薬草について熱弁するのを聞いてたのが興味を持ったきっかけ。
そして、本格的に「薬剤師になろう」って決めたのが
恩人――紅覇の母親に会ってからだった。
その時は勿論、紅覇の母親だってことも、紅覇のことも全く知らなかった頃。
母親は家事や仕事で忙しくて
父親は薬剤師の仕事で各地を飛び回っていて
そんな、十歳の時のこと。
私は構ってもらえなくなった両親に嫌気がさして家出した。
今思えば馬鹿なことをしたなって思う。
だって、構ってもらえなくなっただけで「愛してくれない」って思ったから。
母親も父親も、私のために仕事や家事を頑張ってくれていたのに。
十分愛されていたのに。
家出した日、遠くまで歩いていたらやっぱり淋しくなって。
涙が溢れてきちゃって。
帰ろうって思っても、今帰ったら情けないから嫌だななんて思ってしまって。
木の幹に腰かけて、泣いていたら
「どうしたの?」
って声をかけてくれたひとがいた。
それが、恩人。紅覇の母親。
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あぉぞら - すいません!紅覇くんの消してしまいました…。短編集書いてるので、良ければそちらを…!すいません!玲琉.さんの作品、大好きなんでこれからも読ませて頂きます! (2015年6月22日 1時) (携帯から) (レス) id: 0a5444ed6a (このIDを非表示/違反報告)
玲琉.(プロフ) - あぉぞらさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえてすごく嬉しいし励みになります・・・! あぉぞらさんの小説は時間があれば是非読ませて頂きます・・・! (2015年6月9日 18時) (レス) id: 7d3c1dd707 (このIDを非表示/違反報告)
あぉぞら - 私、小説の一気読みはしないんですが、この小説は面白すぎて一気読みしました!私も紅覇くんの小説かいてるので、良かったら見て下さい! (2015年6月9日 1時) (携帯から) (レス) id: 0a5444ed6a (このIDを非表示/違反報告)
もちづき。(プロフ) - 玲琉.さん» ひえええぇありがとう・・・!!発想力というか妄想りょ((ゲフンゲフン。うん!ちょっと息抜きとかに読ませてもらうね! (2014年12月29日 14時) (レス) id: 8ea19f9ae6 (このIDを非表示/違反報告)
玲琉.(プロフ) - もちづき。さん» 来てくれて有難うー!!!!つきちゃんは文才あると思うよ^^っていうか恋愛のシチュエーションとかの発想力がすごいと思う!この小説はマギ知らなくてもわかる内容だと思うよ・・・!多分・・・!良ければ全部読んでやってね()綺麗な文章とか何それ嬉しすぎ>< (2014年12月29日 14時) (レス) id: 754b0bfd10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玲琉. | 作成日時:2014年4月4日 18時