折り鶴と、千羽鶴と。 【練紅覇】

第拾漆章・「悲しいかな」 ページ17

紅覇に酷いことをしてしまった。

こんなこと、全然するつもりはなかった。

ただ、何故か気に食わなかった。



･･･そうして何回も何回も、頭の中でぐるぐると同じことを考えて。

でも、解決するものや、導く答えも何も･･･何も思いつかない。



ずっと俯いていた顔を上に上げる。

窓の向こうに見える空は茜色から徐々に闇色へと変わってきていた。



「もう夜･･･か」




呟いて、周囲を見渡す。


ここは煌帝国の城で唯一使われていない場所。

電気は壊れているのかついておらず、周囲は空の色と同じ闇色に染まっていた。

勿論、誰もいない。


目を凝らすと見える、長い廊下がやけに淋しく見えた。


背を預け、もたれている壁には所々に掠れた血痕があった。

これは恐らくあまり古いものではないように見える。

一体誰が此処に来たのだろうか。

そして、出来ることであればその人に薬を渡してあげたい。


もう一度、目の前にある窓に目を向けた。





その時






カツンカツンという足音が聞こえた。

それは、聞きなれた足音で。



そして、今一番会いたくない人の足音だった。





その人は私の目の前まで歩を進めると、

不気味なほど穏やかに口角を上げ、目を細めると、可愛らしくにっこりと微笑む。





「こんなところにいたんだぁ･･････A」





愛らしく小首をかしげ、微笑みながら言う。


足音の正体は、紅覇。


久しぶりに笑いかけられたと思えば、こんなにも恐怖を感じる笑みだとは。


微かに雲の隙間から顔を出した月の光に照らされ、

艶かしく光る紅色の髪。

薄紅色の唇。

桃色の頬。

透き通るように白い肌。

綺麗な顔立ち。

澄んだ紅色の二つの瞳。



全てが恐ろしく感じる。



それほどに、紅覇からはただならぬ殺気のようなものが出ていた。




「Aは･･･僕の大切なものを、消した」


「これって、皇子様にしてもいいことなのかな?････違うよねぇ･･･?」


「犯罪だよね。罪だよね。僕の心の傷は何年経っても癒えないね。」



不意に、ドスッという鈍い音が聞こえ、体の真横にある壁に紅覇の如意練刀が刺さる。

あと数ミリで体に突き刺さってしまうくらいの場所に刺さっている。



「ごめんなさい･･･」



恐怖で出そうになかった声が、掠れながらも謝罪の言葉を出す。


悲しいかな、私は馬鹿なんだ。

この言葉でしか反省できないんだ。

許してもらえないって分かってるくせに。

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